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4.大規模非常災害への備え

高圧発電機車の空輸技術の確立

2005年9月の台風14号は、宮崎県内を中心に九州電力の設備に大きな被害をもたらした。記録的な集中豪雨の影響で、崖崩れや道路決壊などにより、山間部で孤立地域が発生し、配電復旧車両が進入できず、資機材の運搬が人力であったため、復旧までに約6日を要した。
この経験をふまえ、孤立した停電地域への早期送電を図ることを目的に、陸上自衛隊が保有する大型ヘリコプターで高圧発電機車を空輸する方法を検討した。
従来の高圧発電機車は、荷重超過のため大型ヘリコプターでの空輸ができなかったが、軽量化やヘリコプターからのダウンウォッシュ(風圧)の影響低減など改良を重ねた結果、20061218日に陸上自衛隊大矢野原演習場(熊本県上益城郡)にて空輸に成功した。
高圧発電機車の空輸技術確立後には、県総合防災訓練などにおいて陸上自衛隊と共同で高圧発電機車の空輸訓練を実施し、九州電力の空輸技術および非常災害に対する取り組み姿勢を社外へPRすることができた(宮崎県総合防災訓練での共同空輸訓練の様子は、九州電力のテレビCMとして九州管内で放送)。
以降、毎年、陸上自衛隊と高圧発電機車の共同空輸訓練を実施している。

非常災害復旧支援システムの開発・導入

配電部門では非常災害発生時、現場出向者は被害設備の調査(巡視)を行い、電柱折損や電線断線などの設備被害状況を紙に記入していた。また、帰社した現場出向者から受領した手書きの紙を基に、営業所内の担当者は被害状況の集約を行い、手作業で復旧計画を策定していたため、時間を要していた。
配電部門ではこの課題を解決するために、モバイル端末(PDA)を活用した「非常災害復旧支援システム」を2003年に開発し、2004年7月に全営業所に導入した。
このシステムは、営業所と現場を、通信機能を持ったモバイル端末でつなげることで、現場出向者への指示や、現場出向者からの被害状況報告をリアルタイムに行うことを可能にした。さらに、現場でモバイル端末に入力された被害情報は、システム内で自動的に集約され、その結果を用いた復旧計画の迅速な策定が可能になった。
また、営業所だけでなく、本店や支店からも被害状況などをリアルタイムに把握できるため、迅速な復旧計画の策定に寄与している。

復旧状況管理システムの開発・導入

配電部門では、非常災害時における停電地域への早期送電のため、営業所エリアの配電線系統が記載された大きな地図(方面別統括図)を営業所対策室に掲示し、停電エリア・被害箇所を記載し、総括的な復旧状況の把握や復旧計画の立案に活用してきた。
しかし、この運用方法では、配電系統変更の都度、方面別統括図の更新に費用を要することや、非常災害時の停電エリア・被害箇所の記載内容の更新に手間がかかること、他部門や支店・本店などとのリアルタイムの情報共有ができないなどの課題があった。
配電部門では、これらの課題を解決するために、複数のシステムのデータを自動連係して視覚的に表示する「復旧状況管理システム」を開発し、2009年度に全営業所に導入した。
「復旧状況管理システム」は、「配電線自動制御システム」の配電線の事故発生区間の情報と、前述の「非常災害復旧支援システム」の設備被害・復旧情報、そして「ロケーションシステム」の現場作業者の位置情報(GPS)を画面上に一括して表示し、視覚的に復旧状況の把握を行うシステムである。
本店・支店・営業所に設置されたOAパソコンから閲覧できるほか、営業所対策室に設置された「復旧状況表示装置」(20インチ液晶モニター9画面を組み合わせた表示装置)による大画面表示も可能で、迅速な復旧計画の策定に貢献している。

非常災害時における情報発信の充実

台風等の非常災害時には、お客さまからの電話やチャットでのお問合せにお答えするとともに、記者発表やホームページ等を通じて広く停電情報の提供をおこなっている。
また、非常災害時における停電情報の充実に関するお客さまのご要望を踏まえ、2015年4月には、停電発生日時や復旧日時、停電地域、停電原因などの情報を速やかに掲載できるようホームページを改修した。さらに2016年には、突発的に発生した停電情報についても、携帯メールサービスに登録されたお客さまの携帯電話やパソコンへメール配信するサービスを開始した。また、台風等の非常災害時にお客さまへ速やかに停電情報をお伝えするため、2018年にはTwitter、2022年にはLINEを活用した停電情報の発信を開始した。

災害時連携計画の策定

九州電力送配電を含めた一般送配電事業者(以下、「一送」)10社は災害時連携計画(以下、「連携計画」)を策定し、2020年7月1日に施行された改正電気事業法の規定に基づき、7月10日に電力広域的運営推進機関を経由して経済産業大臣に届け出をおこなった。連携計画は迅速な復旧に向けて、非常災害時および平時の一送間の連携や一送と関係機関との連携を事前に計画として定めておくものであり、策定にあたっては、従前の電力各社間の災害時連携の枠組みを再点検し、より迅速な停電復旧に向けて、被害状況の迅速な把握・共有、復旧方法の統一、地方自治体等の関係機関との連携などの更なる推進を図ることとした。

自治体や関係機関との相互連携

自治体との連携

自治体が主催する防災関係会議や防災訓練等を通じて、災害時の対応体制を確認する等、九州エリアの全自治体(7県・233市町村)との相互連携に取り組むとともに、2021年12月までに全自治体と、災害時の連携に関する協定を締結した。

関係機関との連携

自衛隊や海上保安本部、指定公共機関等と大規模災害発生時の相互支援、相互連携に関する協定を締結している。

①陸上自衛隊西部方面隊との災害発生時の連携に関する協定の締結

2013年8月2日、陸上自衛隊西部方面隊と当社は、災害発生時における円滑な相互連携を図ることを目的に連携に関する協定を新たに締結した。
両者は、災害で孤立した地域への早期送電を行うため、2007年に配電復旧車両等の空輸に関する連携協定を締結していたが、甚大な災害の発生に備え一層の連携強化を図るため、従来の協定内容を見直し相互協力内容を拡充した。
協定締結に伴い、従来の車両等の空輸に加えて、西部方面隊は当社に対し、災害復旧時に必要となる道路等の確保などを行い、当社は西部方面隊に対して、救援活動に必要となる活動拠点等への電力供給を行うなど、災害発生時の双方の活動がより円滑・効率的に実施できるよう協力体制を強化した。また、平常時においても、定期的な会議の実施や訓練を開催するなど、甚大な災害の発生に備え一層の連携強化を図ることとした。

②海上自衛隊佐世保地方隊との災害発生時の連携に関する協定の締結

2017年4月7日、海上自衛隊佐世保地方隊と当社は、災害発生時における円滑な相互連携を図ることを目的に連携に関する協定を締結した。
協定締結に伴い、佐世保地方隊は当社に対して、陸路が途絶した場合に海上からのアクセス確保を容易にするとともに、当社は佐世保地方隊に対して、救援活動に必要となる活動拠点等への電力供給を行うなど、災害発生時の双方の活動がより円滑・効率的に実施できるよう協力体制を強化した。また、平常時においても、災害で孤立した地域への早期送電を行うため、定期的な会議の実施や訓練を開催するなど、甚大な災害の発生に備え一層の連携強化を図ることとした。

③第十管区海上保安本部との災害時の相互協力に関する協定の締結

2019年3月6日、第十管区海上保安本部と当社は、災害時に迅速かつ円滑に災害対応を実施することを目的に、相互協力に関する協定を締結した。
協定締結により、第十管区海上保安本部は当社に対して、離島等への復旧要員及び資機材の輸送を行うとともに、当社は第十管区海上保安本部に対して、災害対応に必要な施設及び活動拠点等への電源供給などが可能となり、災害時の双方の活動が迅速かつ円滑に実施できることとなった。また、平常時においても、訓練などを通じて、災害対応力の向上に努めていくこととした。

④西日本高速道路との災害発生時の連携に関する協定の締結

2018年6月22日、西日本高速道路と当社は、災害発生時において、災害からの迅速な復旧活動の展開を目的とした相互連携に係る協定を締結した。
協定では、災害時に、西日本高速道路は当社に対して、緊急車両等の通行経路に関する情報提供や災害時の拠点となるサービスエリア・パーキングエリアの提供を行うとともに、当社は西日本高速道路に対して、緊急車両等が移動の際に発見した道路の被害状況等の提供、電力施設等の被害状況及び停電・復旧状況に関する情報提供を行い、迅速な被災地復旧活動の展開を図ることとした。また、平常時においても、連携訓練及び連絡会議の実施を行うことで、災害時に備えた「顔の見える関係」の構築を図ることとした。

⑤ローソンとの大規模災害発生時における相互協力に関する協定の締結

2018年6月25日、ローソンと当社は、大規模災害が発生した時に相互支援を行う協定を締結した。
協定では、災害時に、ローソンは当社に対して、当社からの要請に基づいた可能な範囲での食料や水等の支援物資の提供を行うとともに、当社はローソンに対して、被災地域の停電情報および復旧情報の提供を行い、迅速な被災地復旧活動の展開を図ることとした。また、平常時においても、意見交換、情報交換、訓練の実施により災害対応力の強化を図ることとした。

⑥イオンとの災害時における相互支援に関する協定の締結

20191223日、イオンと当社は、大規模災害が発生した際に両社が協力して被災者支援にあたることを目的に、「災害時における相互支援に関する協定」を締結した。
本協定により、大規模災害発生時、イオンは当社に対して、支援物資の提供および復旧拠点設営用のスペースを貸与し、当社は自治体からの要請に基づき、イオンが設置した一時避難場所への電力供給を、各設備の被害・復旧状況を勘案し可能な範囲で実施することとした。
内閣総理大臣から指定公共機関に認定されている両社は、本協定の締結により、大規模災害発生時の支援活動を円滑に行い、地域社会へのさらなる貢献を目指すとともに、今後も、地域のお客さまのくらしを支えるライフラインとしての社会的責任を果たしていくこととしている。

⑦第七管区海上保安本部との災害時における相互協力に関する協定の締結

2022年2月2日、九州電力及び九州電力送配電(以下、「2社」)は、第七管区海上保安本部と、災害時に迅速かつ円滑に災害対応を実施することを目的に、相互協力に関する協定を締結した。今回の協定締結により、第七管区海上保安本部は2社の災害復旧人員や資機材の搬送が、2社は第七管区海上保安本部が災害対応に必要となる活動拠点等への電源供給や施設及び敷地の提供が可能となり、災害時の双方の活動を迅速かつ円滑に実施できることとなった。また、平常時においても、訓練などを通じて、災害対応力の向上に努めていくこととした。

表:関係機関との連携

協定先 締結 時期 主な協定内容
協定先の協力事項 九州電力・九州電力送配電の 協力事項
①陸上自衛隊 西部方面隊 2013年 8月 ・被害情報等の共有 ・ヘリポートの相互使用 ・復旧資機材、人員等の輸送 ・復旧に必要な道路等の確保 ・被害情報等の共有 ・ヘリポートの相互使用 ・当社施設、敷地等の提供 ・活動拠点等への電源供給
②海上自衛隊 佐世保地方隊 2017年 4月 ・被害情報等の共有 ・ヘリポートの相互使用 ・復旧資機材、人員等の輸送 ・被害情報等の共有 ・ヘリポートの相互使用 ・当社施設、敷地等の提供 ・活動拠点等への電源供給
③第十管区 海上保安本部 2019年 3月 ・被害情報等の共有 ・復旧資機材、人員等の輸送 ・被害情報の共有 ・当社施設、敷地等の提供 ・活動拠点等への電源供給
④西日本高速道路株式会社 2018年 6月 ・緊急車両等の通行経路に関する 情報提供 ・拠点となるサービスエリア、パーキングエリアの提供 ・緊急車両等が発見した道路情報等の提供 ・停電、復旧状況に関する情報提供
⑤株式会社 ローソン 2018年 6月 ・可能な範囲での支援物資の提供 ・停電、復旧状況に関する情報提供
⑥イオン 株式会社 2019年 12月 ・可能な範囲での支援物資の提供 ・復旧拠点設営用スペースの貸与 ・自治体要請に基づく指定店舗(一時避難場所)への電力供給
⑦第七管区海上保安本部 2022年 2月 ・被害情報の共有・復旧人員、資機材の搬送 ・被害情報の共有・九州電力及び九州電力送配電施設、敷地の提供・活動拠点等への電源供給