企業情報

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2000年代のあゆみ

時代背景

2000年代初めの世界経済は、ITバブル崩壊から回復した米国経済の好調やBRICs(ブラジル・ロシア・インド・中国)をはじめとする新興国の急成長による世界同時好況というべき活況を呈した。このような世界同時好況を背景に、日本経済は2002年1月以降69カ月という戦後最長の回復局面に入った。
しかし、こうした世界同時好況は、2007年の夏以降、米国のサブプライムローン(信用力の比較的低い者に対する住宅ローン)問題を契機とする金融市場の混乱により陰り始め、ついに2008年の米国大手投資銀行リーマン・ブラザーズの破産申請(リーマンショック)を契機として世界的な金融危機・実体経済の悪化へと発展し、世界同時不況に陥ることとなり、日本経済も200710月を山として後退局面に入っていった。

電力小売自由化と課題

電力小売自由化の進展

日本の電気事業は、規制緩和の世界的な流れや電気料金の内外価格差是正に対する社会的な要請を踏まえ、安定供給・環境適合を大前提に競争原理を導入し、公正で効率的な電気事業を目指して段階的な制度改革をおこなってきた。
2004年月には電力小売自由化の範囲は高圧(契約容量500kW以上)まで拡大し、国内の販売電力量で約割(当時)が自由化対象となった。翌年月には電力小売自由化の範囲はさらに拡大し、国内の販売電力量で約割(当時)となる契約容量50kW以上のお客さまが自由化対象となった。
2000年の自由化開始以降、新規参入者との競争が本格化するなか、九州電力は自由化対象のお客さまへの新料金メニュー設定や業務用電化厨房などオール電化の推進で営業力の強化を図る一方、中期経営方針に基づく一層の効率化などに取り組んだ。

送配電ネットワークの公平性・透明性・中立性確保

小売自由化範囲の拡大に伴い、電力会社が管理・運営する送配電ネットワークは新規参入事業者も利用する「公共インフラ」としての性格がより一層強まり、送配電ネットワークの公平性・透明性・中立性の確保が重要視されるようになった。
これを受けて、送配電ネットワークの利用などに関するルールの策定・監視、系統利用者と一般電気事業者の間における紛争等の斡旋調停を主たる業務とする電力系統利用協議会が2004月に設立された。

全国規模の卸電力取引市場の整備

小売自由化範囲の拡大に伴い、電源開発に関する投資の判断材料となる指標価格の形成や需給ミスマッチ時における電力の販売・調達手段の充実など、事業者のリスクマネジメント機能の強化のため、200311月に日本卸電力取引所が設立され、2005月から運用を開始した。

長期を見据えた経営の推進

「九州電力の思い」の制定

当社は、2007月に新たな企業理念として「九州電力の思い」を制定した。激変する経営環境のなかで、お客さまから選ばれ続ける企業であるために、どうあるべきかではなくどうありたいかを1年半にわたって全社的に議論し、「ずっと先まで、明るくしたい。」というメッセージで、将来にわたるエネルギーの安定供給と持続可能な社会への貢献を約束した。
さらに、「九州電力の思い」の実現に向けて、2008年には社員一人ひとりの心構えや姿勢を示す「行動指針」を、2009年には長期的な観点から経営の方向性を示す「長期経営ビジョン」及び具体的施策の方向性を示す新たな「中期経営方針」を策定した。
また、「九州電力の思い」を実現するための企業風土の醸成を目指して、2007年には人材育成の新たな指針となる「九州電力教育憲章」を2007年に制定し、女性の活躍を推進するためのキャリア形成支援や仕事と家庭の両立支援の拡大などに取り組んだ。

CSR、環境経営への取組み

2001年度以降の10年間の社会的な経営環境の最も大きな変化として、企業の社会的責任(CSR)に関する社会の関心の高まりが挙げられる。法令遵守から更に一歩進んで、株主・投資家、地域社会等のあらゆるステークホルダーに対する企業としての責任ある行動が求められるようになった。
そのような中、九州電力グループ一体となってCSRへ取り組む姿勢を明確に示すため、2004年に従来の「九州電力企業行動憲章」をCSRの視点から見直す形で「九州電力グループ行動憲章」を制定し、体制面ではCSR担当役員を任命するとともに社長を委員長とする「CSR推進会議」を設置した。
また、持続可能な社会の実現に向けて環境経営の重要性が高まっていたことから、環境活動の心構えや方向性を明確に示すものとして、2001年に「九州電力環境憲章」を制定した。2002年には対象をグループ会社全体に拡大し、「九電グループ環境理念」及び「九電グループ環境方針」を制定した。さらに、2008年には、九州電力グループが一体となって環境経営に取り組んでいく姿勢を明確に示す観点からこれらの理念・方針を統合し、新たに「九州電力グループ環境憲章」を制定した。

電源多様化

九州電力は、エネルギーの長期安定確保および国が目指す低炭素社会の実現に向けて、原子力を推進するとともに、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの積極的な導入・火力の高効率化を推進してきた。

原子力発電

エネルギー資源に乏しい日本において将来にわたってエネルギーを安定的に確保していくためには、原子燃料サイクルの確立が必要不可欠であり、その一環であるプルサーマル発電を確実に実施していく必要があった。さらに、ウラン資源の有効活用、高レベル放射性廃棄物の低減等も踏まえ、九州電力は2004年に玄海原子力発電所3号機でMOX燃料を使用することを目的とした「プルサーマル計画」を公表し、2009年に全国初となるプルサーマル発電を開始した。

火力発電

世界最大規模となる加圧流動床複合発電プラントである苅田発電所新1号機が2001年に、高効率な超々臨界圧コンベンショナル方式の大容量石炭火力プラントである苓北発電所2号機が2003年に、それぞれ営業運転を開始した。

水力発電

九州電力で初めて可変速揚水発電システムを導入し、需給、系統運用面で非常に大きな役割を担う最新鋭の小丸川発電所号機が2007年に営業運転を開始した。

再生可能エネルギー

地熱発電では、国内初となる地熱バイナリー発電として八丁原バイナリー発電所が2006年に営業運転を開始し、低沸点媒体の利用によって、従来は利用できなかった低温度域での地熱利用が可能になった。
また、国産エネルギーの活用および地球温暖化防止の観点から太陽光、風力及びバイオマス発電等の積極的な開発・導入を推進しており、2003年には甑島風力発電所、野間岬ウィンドパーク発電所、2010年には九州電力初となるメガソーラー大牟田発電所がそれぞれ運転を開始し、2010年から石炭火力発電所である苓北発電所において、木質バイオマス石炭混焼発電実証事業を開始した。

東日本大震災の発生

2011年11日に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故では、九州電力も電力応援融通を行い、被災地への復旧要員の派遣や物資・資機材の提供をおこなった。また経済産業大臣からの緊急安全対策実施指示に基づき、電源や冷却機能が喪失した場合でも原子力災害を防止するための対策を実施した。