プレスリリース

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2023年3月22日
国立大学法人九州大学
双日株式会社
九州電力株式会社

九州大学、双日、九州電力は大気中の二酸化炭素を回収する技術を用いたDAC-U装置の用途を共同開発・検証するために覚書を締結しました

 国立大学法人九州大学(以下「九州大学」)と双日株式会社(以下「双日」)、九州電力株式会社(以下「九州電力」)は、九州大学が開発中(注1)の、大気からの二酸化炭素(CO2)の直接回収(Direct Air Capture,以下「DAC」)を可能とする分離膜型CO2回収(membrane-based DAC,以下「m-DACTM」)装置と、回収したCO2を燃料等へ変換し利用する装置を組み合わせた「CO2回収・利用(Direct Air Capture and Utilization,以下「DAC-U」)装置」の用途を共同開発・検証するための覚書を締結しました。

 2022年2月に九州大学と双日はm-DACTM技術とそれに関連した最先端CO2活用基盤技術の実用化・事業化推進の覚書を締結し、DAC-U装置の基礎研究開発と社会実装に向けた検討を進めてきました。また、本取り組みに賛同頂ける実証実験や用途開発のパートナー企業の参画を募っており、この度3社で覚書を締結することになりました。

 本共同検証は、九州電力による都市開発などでの住宅やビルにおいて、DAC-U装置の活用実証を行うことで地域のカーボンニュートラル実現に貢献することを目指します。九州大学はDAC-U装置の技術情報、知見の提供など、双日は株式会社双日イノベーション・テクノロジー研究所(注2)を活用したビジネスモデル仮説の検証、九州電力はDAC-U装置の利用者側の立場での用途仮説の検証、実証候補地の検討などを担当する予定です。

 3社は今後も産学連携体制を基盤にDAC技術の研究開発を促進し、DAC-U装置の用途開発を通じて、社会課題解決とカーボンニュートラルへの取り組みを加速推進していきます。

(注1)九州大学のカーボンニュートラル・エネルギー国際研究所およびネガティブエミッションテクノロジー研究センターが、内閣府ムーンショット型研究開発事業で研究開発を進めています。内閣府ムーンショット型研究開発事業は、我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進する国の大型研究プログラムです。
内閣府Website別ウィンドウ

(注2)株式会社双日イノベーション・テクノロジー研究所は、技術の専門家による科学的な見立てによって有望な新技術の発掘・育成を行うことを目的として設立された、双日の100%子会社です。

m-DACTM技術とDAC-U装置

 大気から人為的かつ直接的にCO2を回収するDAC技術は、カーボンニュートラル、さらにその一歩先を行く“ビヨンドゼロ社会”の実現に向けて、重要な技術として注目されており、世界各国で研究開発が進められています。
 九州大学が研究開発を進めるm-DACTM技術は、従来のCO2分離膜と比べて極めて高いCO2透過性を持つことが特徴です。このため従来では不可能と考えられてきた分離膜を用いたDAC(m-DACTM)技術が、従来技術の数十分の1以下の面積かつ低エネルギーで実現できる可能性が高まりました。分離膜はCO2吸収液などの薬剤を使わず、分離膜のモジュール化で、必要に応じてCO2回収量を任意に調整可能であるため、従来のDAC技術で課題とされていたDACシステム設置に対する地理的な制限が大きく緩和され、多様な装置やサイズで、様々な場所でCO2を回収(ユビキタスCO2回収)することが可能となります。更に九州大学が開発を進めるCO2変換ユニットとこのm-DACTMユニットを連結すれば、CO2回収から炭素燃料製造までを連続・一貫して行うDAC-U装置といったものが実現されます。この装置は、地産地消型カーボンリサイクル社会構築にむけて新たなソリューションとなることが期待されます。

大気中の二酸化炭素の回収・変換ユニットの写真

以上