エネコミ

2016年2月配信

2016年 1月20日
規制委安全審査、特重施設の申請10基に 設置期限確定の4基急ぐ

 原子力発電所へのテロ対策などに備えて配備が要求されている特定重大事故等対処施設(特重施設)について、原子力規制委員会への原子炉設置変更許可申請が6発電所・10基となった。昨年末から今月にかけて、九州電力や北海道電力、四国電力が新たに申請した。特重施設の設置には新規制基準で猶予期間が設けられ、原子炉など本体施設の工事計画認可(工認)取得から5年後までの完成が求められる。10基のうち、すでに工認が下り、猶予期間の起算日が固まったのは4基。規制委は、起算日が確定したプラントの特重施設審査を先行させるとみられる。
 特重施設は、意図的な航空機衝突やテロ行為などによって、原子炉冷却機能が損なわれるなどして、炉心溶融に至ったり、そのおそれがある場合に備える施設。原子炉格納容器を減圧し破損を防ぐ設備(フィルター付きベント装置)や、通常の中央制御室を代替できる緊急時制御室などが設けられる。
 新規制基準では重大事故対策が規制要求に位置付けられ、特重施設の設置を考慮しなくても、可搬型ポンプや電源の多様化・多重化により重大事故を防げるかどうかが審査される。特重施設はあくまでも、信頼性向上のためのバックアップ施設だ。そのため規制委は特重施設の設置を即時適用せず、新規制基準施行日の2013年7月8日を起点に、5年間の猶予期間を設定。どの発電所も一律「18年7月」までの配備を求めていた。
 しかし、原子炉など本体施設の基準地震動(Ss)と、それに基づく耐震強度計算といった項目が固まらなければ、特重施設の審査は進めにくい。本体施設の審査期間として規制委は当初「半年から1年程度」と見込んでいたが、実際の審査は長期化。このため猶予期間の起算日を「新規制基準施行から5年」から、「本体施設の工認取得から5年」に見直すことを決めていた。
 これまでに申請があった6発電所・10基のうち、猶予期間の起算日が決まったのは、(1)九州電力川内原子力発電所1、2号機(2)関西電力高浜発電所3、4号機――の4基のみ。四国電力伊方発電所3号機の工認審査も終盤に差し掛かりつつある。本体施設の審査が進んだプラントほど、特重施設の審査対応は差し迫った課題になる。
 例えば新規制基準の下で最も早く工認が下りた川内1号機は20年3月、2号機は同年5月までに完成させなければならない。従来の「18年7月」と比べれば伸びたものの、決して楽な期間とは言い難い。
 規制委は、申請が早かった高浜3、4号機と、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機の計4基を対象に審査を先行させてきた。今後の特重施設に関する審査は、これらのプラントに加え、期限が確定している川内1、2号機と、近く本体施設の工認が下りる見込みの伊方3号機を急ぐとみられる。

(電気新聞2016年1月20日付1面)