エネコミ

2016年2月配信

2016年 2月2日
[観測点 原子力規制委の審議から]中深度処分「国で議論を」

 ▼…廃炉廃棄物規制の基本方針、年度内確定へ
 原子力施設の廃止措置に伴って生じる低レベル放射性廃棄物のうち、比較的放射能レベルが高い廃棄物の規制に関する基本方針が年度内に固まる見通しとなった。原子力規制委員会は1月25日、「廃炉等に伴う放射性廃棄物の規制に関する検討チーム」の第11回会合を開催。この中で座長役の田中知委員が今後、「炉内等廃棄物の埋設にかかわる規制の考え方」の報告書案をパブリックコメント(意見募集)にかける方針を示した。
 原子力規制庁や有識者で構成する検討チームが議論してきたのは、低レベル廃棄物のうち炉心隔壁(シュラウド)や炉心支持板などの中深度処分(余裕深度処分)対象の廃棄物。報告書案では埋設地の深さを「地表面から70メートル以深」、規制終了までの期間を「事業開始後300~400年程度」などとした。規制庁の担当者は25日の会合後、「年度内には『規制の考え方』をセットしたい」と述べ、2月上旬にもパブコメの要否を含め、規制委に諮る考えを示した。
 中深度処分を具体化させる上での大きな課題は、土地利用制限などの制度的管理や、実施主体が備えるべき要件。会合で田中委員はこの2点について「国全体で考えなければならない。他省庁とも連携して規制委としても取り組みたい」と述べた。
 300~400年程度の事業期間を念頭に置けば、中深度処分も実施主体が「つぶれないこと」が大前提になる。
 長期にわたる事業期間中、十分な技術的能力、経理的基礎を維持し続けなければならない。高レベル放射性廃棄物の地層処分と同様だ。制度的管理や実施主体の要件といった課題は、規制委より他省庁の所管。規制庁の担当者は「政府の中で方向性を議論してくれればありがたい。(関係省庁は)問題意識を持ってくれているはず」と語った。
 ▼…審査会合資料、異例の品切れ
 1月26日の審査会合は午前に第321回、午後に非公開の第322回、その後、再び公開の第323回と"トリプルヘッダー"となった。対象となったのは5社・6発電所・10基に及んだ。
 中でも午前は一般傍聴席がほぼ満席だった。PWR(加圧水型軽水炉)3社の特定重大事故等対処施設(特重施設)や、九州電力川内原子力発電所の緊急時対策所計画見直し、敷地内破砕帯の活動性が焦点になる日本原子力発電敦賀発電所2号機と、注目度の高い案件がめじろ押しだったためだ。
 開会10分ほど前、会場に到着すると、既に配布資料は在庫切れ。想定外だったのか、規制庁の担当者が資料確保に追われる姿が見られた。
 関西電力高浜発電所1、2号機と美浜発電所3号機を取り上げた午後の第323回会合は光景が一変。わずか1人の一般傍聴者は途中退席し、午後5時半すぎの終了時点で一般傍聴者はゼロ。配布資料も「在庫あり」だった。
   ▼…電力トップとの意見交換、2巡目に
 3日の規制委臨時会議では、九州電力の瓜生道明社長を招き意見交換を行う。
 川内原子力発電所1、2号機の再稼働の経験や、安全性向上に向けた経営トップとしての考えを聞き、議論する。電力トップとの意見交換は2巡目に入る。
 審査会合は2、4日にプラント関係、5日に地震・津波関係が予定されている。

(電気新聞2016年2月2日付2面)