九州電力は2日、佐賀県伊万里市と玄海原子力発電所の安全協定を締結した。原子炉施設変更などの際の事前説明、報道情報の事前連絡などを入れた一方、事前了解など市が求めていた立地自治体並みの権限は盛り込まれていない。玄海原子力から30キロメートル圏内の伊万里市はこれまで九州電力と協定を結んでいなかったが、今回の協定締結で、九州電力と佐賀県内外にある玄海原子力から30キロメートル圏内全ての自治体が安全協定を締結したことになる。
安全協定に合わせ、伊万里市と佐賀県は、協定に関わる覚書を別途締結した。覚書では、協定の運用にあたって県が伊万里市の意向に十分配慮するといった内容のほか、玄海原子力に何らかの異常が発生した場合、市が県に立ち入り調査を要請することができ、市もそれに同行できるといった内容が記された。
佐賀県庁で行われた締結式には瓜生道明社長、塚部芳和市長のほか、佐賀県の山口祥義知事が出席。山口知事はあいさつで「伊万里市民の安全・安心につながる」と協定を評価するとともに「お互い誠実に運用していくことが重要」と強調。塚部市長は「安心感の高い原子力運営をしてもらいたい」と九州電力に要望した。また、瓜生社長は「協定を誠実、確実に運用していくことで市民の安全・安心につながるようにしたい」と述べた。
式典終了後、取材に応じた塚部市長は「3年半、立地自治体並みの権限を求め続けてきたが(協定未締結のまま進むと)伊万里市だけが宙に浮いてしまう」と協定締結の経緯を説明。「満足度は80%」としながらも、佐賀県と結んだ覚書を挙げ「立地自治体に近づいた」と評価した。また山口知事は「内容を誠実に履行していくことが重要。九州電力との信頼関係をいかに構築していくかがポイント」とあらためて強調。玄海原子力の再稼働同意について問われると「規制委の審査の進展を見つつ、他県の事例を参考にしながら(国に)思いを伝える」と述べた。
玄海原子力発電所30キロメートル圏内に入る自治体は、玄海町や伊万里市のほか佐賀県唐津市、福岡県糸島市、長崎県松浦市、佐世保市、平戸市、壱岐市の6つが該当する。
(電気新聞2016年2月3日付2面)