電力小売り全面自由化まで50日を切った。九州電力は先月、新しい料金プランやサービスの概要を発表。瓜生道明社長は問い合わせの多さに「関心の高さを実感している」と話すが、若手や女性など顧客と接する社員らが中心となって新時代のサービスをつくっていることに期待を寄せる。川内原子力発電所の免震重要棟建設を巡る議論については「説明不足により混乱を招いたことを反省している」とし、再検討の上で成案をしっかり説明していきたいと強調する。(聞き手=円浄 加奈子)
◇柔軟性持って
――九州経済の動向、販売電力量の状況は。
「生産や輸出は横ばいまたは弱含みだが、民間設備投資や住宅投資などは増加傾向。インバウンド需要などは好調で、全体では緩やかな回復が続くと期待している」
「販売電力量は足取りが少し弱い。第3・四半期までの累計で前年同期比2.7%のマイナスとなった。鉄鋼や化学などで生産が低水準で推移しているほか、一般需要も気温影響に加え、業務用での離脱拡大や省エネ投資の効果などで低減傾向にある。通期でも前年度比マイナスの見通しで、来年度も小売り全面自由化での離脱をある程度見込まなければならない。当面は4月からの新料金プランやサービス拡充に力を入れるが、確実に供給力に余裕が見込めるとなれば、オール電化など需要増加策を考えていくことになるだろう。電源構成の在り方についても、今後はより柔軟性を持った考え方が必要になる」
――新しい料金プランやサービスへの反応は。
「公表以降、様々な問い合わせを頂いているが、比較的割引効果が少ないお客さまからのお申し込みも多く、小売り全面自由化への関心の高さを実感している。営業戦略の全体像を近々公表する予定だが、その後は検針表の裏面やチラシの活用、また新聞広告やテレビCMなどを打ち、積極的にPRしていきたい」
「新しいサービスとして現在、具体化しているのが、電気使用状況を活用した高齢者の方の見守りや電気のお困りごとへの対応強化、暮らしのサポートなど。このほか地域と連携した新サービスなども拡充していく」
「新料金プランやサービス、PR手法などは若手や女性から出たアイデアが中心になっている。机上ではなく、営業所などで実際にお客さまと接して将来の九州電力を担う社員たちが、新しい時代のサービスをつくっていくことに期待している」
――首都圏などエリア外での事業展開は。
「域外は小売電気事業者に登録申請した『九電みらいエナジー』が担うが、登録完了後に料金やサービスを発表する。首都圏は事業環境も厳しいと思うが、4月から販売を開始する方向だ。自ら新規参入者として戦うことによって見えてくるものも多いだろうし、その経験をまた九州電力本体の営業に生かす狙いもある」
――ガスの小売り全面自由化への対応は。
「既存のガス事業資源を活用し、法人のお客さまには既に一部で小売りを行っている。家庭向けも電気とガスをセットで販売していきたい。事業性評価や販売・保安の体制、技術面の課題などを詰めているところだ」
◇混乱招き反省
――原子力について。
「川内原子力発電所1、2号機が通常運転に復帰し、安全運転を継続している。新たなスタートと気を引き締め、引き続き安全性向上に努めていく。また2年半の長期にわたり審査対応にあたった原子力、土木など関係部門をはじめサポートしてきた全ての社員、また関係会社、協力会社の皆さまなどにあらためて感謝を申し上げたい」
「玄海原子力発電所3、4号機は基準地震動(Ss)や基準津波がおおむね確定し、昨年12月に現地調査も行われた。現地では追加安全対策工事なども継続して実施している」
「川内原子力の免震重要棟建設を巡る議論については、免震にする場合、技術的な評価や設計の課題検討に時間を要すことがわかり、一方で耐震の場合は既設の緊急時対策所(緊対所)の審査データも活用できる上、建物建設の実績もある。早期に対策が打てることは安全性向上につながる。総合的にみて、川内原子力の場合は耐震構造の支援棟を既設の緊対所と一体で運用するのが適切と判断したのだが、公表が遅れたことや私どもの説明不足によって混乱を招いた。大いに反省している。原子力規制委員会など関係各所からのご指摘を真摯に受け止め、原点に戻って再検討し、できるだけ早く成案をまとめてしっかりご説明していきたい」
(電気新聞2016年2月22日付1面)