地球環境産業技術研究機構(RITE)は2050年までに温室効果ガスを80%減らす長期目標について、二酸化炭素(CO2)を追加で1トン削減する費用(限界削減費用)が約70万円かかり、「許容できる水準ではない」とする分析結果をまとめた。温暖化対策をとらない場合、削減費用は年間で最大72兆円と推計。30~50年までのGDP(国内総生産)の増加想定13兆円を大きく上回り、「マイナス成長に陥る可能性が高い」としている。
50年80%減に必要な電源構成は原子力4割、再生可能エネルギー5割、二酸化炭素回収・貯留(CCS)付き火力が1割で、限界削減費用が約70万円。これはかなり無理がある電源構成との考えも示した。
50年80%減を記した第4次環境基本計画は12年に閣議決定。近く策定する地球温暖化対策計画への記載が焦点だ。RITEは科学的知見の観点からも目標決め打ちは適切でなく、現実的範囲で幅をとるべきと指摘した。
80%減はIPCCの第4次評価報告書(07年)が源流。2度目標達成への最も厳しい削減経路で「先進国は50年に1990年比80~95%減」という絵姿を示したことから採用された。だが第5次評価報告書(13年)では排出削減経路に関する科学的知見が増え、2度未満をいつ、どの確率で達成するかの選択次第で削減目標に幅が出る。大気中のCO2濃度と温度上昇との相関を示す気候感度にも不確実性がある。RITEは、決め打ちの目標が好ましくない理由としてこれらを挙げている。
昨年のG7サミットでは第5次報告書内の最も厳しい削減経路に基づき世界全体で「50年に10年比40~70%減」の上方目標を共有したが、50年80%減目標とは異なる。
(電気新聞2016年3月3日付1面)