◆川内1、2のSs評価、最大でも150ガルと想定
最大マグニチュード(M)7.3を観測した熊本地震。その震源断層と推定される「布田川・日奈久断層帯」は、九州電力川内原子力発電所1、2号機の新規制基準適合性審査で、より大きな規模の地震を起こす活断層帯として評価された。原子力規制委員会の審査では同断層帯の長さを92.7キロメートルと評価。断層帯が全て動くと想定し地震規模をM8.1、観測される地震動を約150ガルと見積もっている。同断層帯と川内原子力発電所の敷地は約92キロメートル離れており、その分揺れの勢いは衰える。同発電所の基準地震動(Ss)を評価する上では、敷地と震央の距離が近い「市来断層帯」「甑(こしき)断層帯」の影響が重視された。
Ssのうち「震源を特定して策定する地震動」に関する審査では(1)プレート間地震(2)プレート内地震(3)内陸地殻内地震――のそれぞれで、詳細な調査が求められる。活断層型の地震は内陸地殻内地震の評価に基づき審査される。敷地から半径30キロメートル以内、30キロメートル以遠に存在する活断層を把握した上で、影響の大きいものを検討用地震として選定。地震規模などを割り出さなければならない。
通常、断層帯は複数の断層が連なり、そのうち一部の区間が動くと考えられている。今回の熊本地震でも「布田川断層帯」の一部区間がずれ動き、それによって16日未明のM7.3の本震を引き起こしたと推定されている。
一方、規制委の審査では活動区間同士の離隔距離が短かったり、傾斜角や運動センスなど性状が似通っている場合、全体が連動して動くことを想定して地震規模を導くよう求められることが多い。川内1、2号機を巡る審査で、九州電力は「布田川・日奈久断層帯」は全ての区間が同時にずれ動くとの前提で、M8.1の地震を想定した。
こうした審査経緯を踏まえ、田中俊一委員長は18日に行った記者会見で「(想定する地震については)最大の不確実性を踏まえている」「規制委としては、かなり保守的に、安全サイドに評価している」と述べた。
敷地と活断層の距離が近いほど、施設への影響は大きくなる。揺れが減衰しきらないまま到達するからだ。そのため、Ssを確定する際には敷地に近い活断層の長さや断層面積、震源の規模、推定深さといった情報が重要になる。
川内の審査では、敷地から震央までの距離が近い「市来断層帯(市来区間)」をM7.2、「甑断層帯(甑区間)」と「市来断層帯(甑海峡中央区間)」をいずれもM7.5と想定。各断層について敷地への影響が厳しくなるよう、破壊開始点(震源)やアスペリティー(強震発生領域)の位置、応力降下量などの不確かさを考慮に入れてSsが導かれ、新規制基準に適合していると判断された
(電気新聞2016年4月20日付1面)