エネコミ

2016年5月配信

2016年4月26日
原子力停止、火力たき増し2兆円/15年度、エネ庁が燃料費影響を試算

 経済産業省・資源エネルギー庁は、原子力発電所の停止に伴う2015年度の火力発電のたき増し分を試算した。沖縄を除く9電力会社計のたき増しに掛かる燃料費は、2兆円(推計値)になると算定。九州電力川内原子力発電所1、2号機が運転していることを前提にしており、14年度実績から1兆4千億円減少した。15年10月の前回試算では2兆3千億円としていたが、LNG(液化天然ガス)や原油価格の下落幅がさらに大きくなっており、円安の影響を飲み込んだ。
 22日に開かれた総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の電力需給検証小委員会の会合で、事務局が提示した。
 08~10年度平均の原子力発電電力量(2748億キロワット時)から、15年度に再稼働した九州電力川内1、2号機が15年度末まで稼働した際の発電電力量(86億キロワット時)を差し引いた2662億キロワット時について、火力で代替した場合を試算した。
 たき増し比率は15年3月~16年2月の直近1年間と、10年度の火力発電実績の差分から算出。14年度実績と比べ、燃料費増の内訳ではLNGが2兆5千億円から1兆5千億円、石油が1兆1千億円から6千億円にそれぞれ減少した。
 燃料費増が総コストに占める割合は11.2%で、11年度以降では最低となった。原子力利用率は2.3%。川内1、2号機の再稼働による全体の燃料費増への影響は、1千億円だった。
 14年度実績と比べて最も影響が大きいのが、燃料価格要因。14年度は10年度と比べ、6千億円押し上げる効果があったが、15年度は10年度よりも燃料価格が下がっているため、逆に7千億円押し下げる方向に作用した。
 ただ、エネ庁幹部は「燃料価格は長期的に、新興国の需要増によって上昇していく見通し。電源の多様化を確保することで、バーゲニングパワーを高める必要もある」とする。このため、エネルギーセキュリティーの面からも、原子力の重要性には引き続き変わりがなさそうだ。

(電気新聞2016年4月26日付3面)