◆容量計11万トン/2020年末操業を予定
米国内に使用済み燃料の統合型中間貯蔵施設(CISF)を建設する計画が本格化してきた。テキサス州の産業廃棄物処分会社は先月末、米原子力規制委員会(NRC)に建設・操業許可を申請した。ニューメキシコ州内の自治体出資会社も、来月の許可申請を予定する。両施設は2020年末頃の操業開始を予定する。貯蔵容量は計11万トンで、50年までに米国内で発生する使用済み燃料の8割以上を貯蔵できる。海外電力調査会の原泰斗研究員は「民間が国の施策を待たず、州や郡の支援を受けて自主的に動き出したことは注目に値する」と話す。
先月末に許認可を申請したウェイスト・コントロール・スペシャリスツ(WCS)はテキサス州内に54平方キロメートルの土地を所有し、産廃や低レベル放射性廃棄物の処分を手掛ける。その1.3平方キロメートルに乾式貯蔵施設を建設する計画で、NRCとの1年間の事前協議を経て申請した。
貯蔵容量は4万トンで、5千トンずつ8段階に分けて建設する。最初の5千トンは、すでに運転を停止したプラントに保管中の使用済み燃料を受け入れる見通し。申請が受理され、審査が順調に進めば20年末頃に操業を開始する。許認可の期間は40年間で、20年の運転延長を予定する。総事業費は52億ドル(5700億円)を見込む。
地元のアンドリュース郡は油田開発が廃れ、現在は産廃処分が主産業。WCSは雇用創出や高額納税などで貢献しており、郡の行政委員会は昨年1月、中間貯蔵施設建設への支援を全会一致で決議した。テキサス州政府も「中間貯蔵施設の建設は州の利益にかなう」との見解を示すなど、計画を後押しする。
来月の許認可申請を予定するエディ・リー・エナジー・アライアンス(ELEA)は、ニューメキシコ州内の4つの自治体が共同設立した有限責任会社。すでに4平方キロメートルの土地を所有し、貯蔵容量7万トンの乾式貯蔵施設を建設する計画だ。同州には原子力施設が数多くあり、すでに地元住民は中間貯蔵施設の建設に合意済みという。
米国内で発生した使用済み燃料は現在7万5千トンで、50年には少なくとも13万3千トンに増える見通し。すでに廃炉になったプラントで貯蔵中の使用済み燃料も約7千トンあり、CISFの早期建設が求められていた。
米エネルギー省(DOE)は09年のユッカマウンテン計画撤回を受け、25年までにCISFを建設し、48年までに最終処分場の操業を開始する目標を設定した。しかし連邦議会は、ユッカマウンテン計画復活にこだわる下院と、CISFの建設推進を最優先とする上院とで二分。法制化の議論はこう着状態にある。
民間が自主的にCISF建設に動き出したことについて、海電調の原氏は「廃炉サイトに使用済み燃料だけが取り残されている状態の解消や、依然不透明な最終処分場建設までの暫定措置として、意義は大きい」と指摘する。
(電気新聞2016年5月30日付1面)