エネコミ

2016年6月配信

2016年 6月3日
パリ協定、年内発効に現実味/露が早期締結姿勢、排出量要件満たす

 パリ協定の年内発効が徐々に現実味を帯びてきた。ロシアが協定の早期締結に舵を切ったためだ。フランス政府の発表によると、モスクワで先月末に開かれたロシアとの閣僚会談で、ロシアのフロポーニン副首相が10月までに「締結準備書」を作成するとの見通しを明らかにした。現時点で米中など世界の温室効果ガス排出量の49%に達する国々が年内締結に前向きだが、ロシアが締結すれば55%を超え、日本抜きでも排出量面の発効要件を満たす。後は、現時点で17カ国となっている締結済みの国が、55カ国を超えれば発効に至る。日本政府の対応も注目される。
 パリ協定を締結するには締結書類を国連に提出する必要がある。「締結準備書」の詳細は明らかでなく、国内向けの議案との見方もあるが、早期締結の意思を示したことは明らかだ。ロシアは早期締結に慎重とみられていただけに、驚きを持って受け止める日本政府関係者もいた。
 パリ協定を発効させるには、締結国が55カ国以上に達し、かつ世界の温室効果ガス排出量の55%以上を満たす必要がある。二大排出国の米中は年内に締結手続きを終えると表明した。カナダ、メキシコ、インドネシア、オーストラリアなども年内締結に前向きだ。ポイントは9月13~26日の国連総会で、ここに締結を合わせてくるとの見方も日本政府内にある。
 これら年内締結に前向きな国々の排出量割合を合計すると約49%。排出量割合が7.53%のロシア一国が締結すれば発効の一要件を満たす。
 締結準備書を10月までに策定するとの区切りは、国連総会中の締結国の増え具合を見極めるためとの見方もまた、出ている。
 日本政府も先進7カ国(G7)の一角として年内の発効目標を伊勢志摩サミットで掲げたが、ロシアが早期締結姿勢に転じたことで、今後の締結手続きへの注目度は高まる。9月末にも召集される重要法案がめじろ押しの臨時国会に、締結承認案を提出する判断を下すかが焦点だ。米オバマ政権の「トランプ封じ」など政治的な思惑の中で年内発効への流れが徐々に形作られており、「日本も早期に締結してパリ協定の詳細なルール作りに参加したほうが得策」(学識者)との意見も出ている。

(電気新聞2016年6月3日付1面)