◆PWR・工認審査控える泊、玄海/BWR・Ss確定、柏崎刈羽のみ
原子力規制委員会による審査を経て、今後再稼働に至る原子力プラントが見通しにくくなっている。2013年7月の新規制基準施行と同時期に申請したPWR(加圧水型軽水炉)は九州電力川内原子力発電所1、2号機、関西電力高浜発電所3、4号機、四国電力伊方発電所3号機の計5基が許認可を終えた。ただ高浜3、4号機は大津地方裁判所による運転差し止め仮処分決定により停止中。伊方3号機は今週末にも燃料を装荷する予定で7月の再稼働が視界に入ったが、後続のPWRは原子炉設置変更許可審査の途上にある。一方のBWR(沸騰水型軽水炉)も、基準地震動(Ss)が確定したのは東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機にとどまっている。
◇リソース投入
新規制基準施行と同時期に申請したPWRのうち、審査が継続しているのは北海道電力泊発電所3号機、関電大飯発電所3、4号機、九州電力玄海原子力発電所3、4号機。この3発電所・5基が伊方3号機に続いている。だが、運転期間延長申請が認可された関電高浜1、2号機と、11月に40年を迎える美浜発電所3号機に審査の資源を費やしていることを念頭に、田中俊一委員長は「関電だけにリソースをつぎ込むわけにはいかない」として、大飯より泊と玄海を優先させる考えを示す。
大飯を巡っては、島崎邦彦・前委員長代理(東京大学名誉教授)がSs策定の際に用いた計算式(入倉・三宅式)では過小評価になる恐れがあると指摘。規制委は20日の定例会合で、地震規模を再計算する方針を決めた。原子力規制庁によると、計算自体は2週間程度でできるものの、「出た数字にどのような意味があるかなども考えなければならない」。計算結果を規制委に報告するには一定の時間がかかるとみられる。
泊、玄海ともに原子炉設置変更許可の審査は終盤に差し掛かっているものの、これが終了しても工事計画認可(工認)審査が控える。Ss見直しに伴う耐震補強など追加工事が発生することも予想され、再稼働時期を見通すのは難しい。
◇6基並行して
一方、BWRでは昨夏以降、柏崎刈羽6、7号機を対象にした審査を集中的に重ねたが、耐震評価手法を巡る議論に時間がかかるとみて、他のプラント審査を再開。東北電力女川原子力発電所2号機、中部電力浜岡原子力発電所4号機、中国電力島根原子力発電所2号機、日本原子力発電東海第二発電所の4基について、個別論点の議論に入った。当面は柏崎刈羽6、7号機を交えた5発電所・6基の審査が並行で進む見込みだ。
ただ、柏崎刈羽以外の発電所はいずれもSsが未確定。震源モデルの設定などで進展はみられるが、太平洋側に立地する女川、浜岡、東海第二はプレート間・プレート内地震、島根は近傍を走る活断層「穴道断層」による地震動評価が慎重に議論されているためだ。
『敷地内破砕帯に関する有識者会合』による一定の評価がまとまるまで、審査が実質的に保留されていた東北電力東通原子力発電所、北陸電力志賀原子力発電所2号機、日本原電敦賀発電所2号機の3発電所について規制委は、まずは地震・地質関係の審査を先行させている。有識者会合で、敷地内断層が将来活動する可能性が否定できないとされた志賀2号機を巡り、北陸電力の金井豊社長は10日、都内で会見し「データの積み重ねがあれば、活動性はないものということが規制委にも納得頂けるはず」とした。
40年目以降の運転継続を目指す関電高浜1、2号機は20日、運転期間延長認可が交付された。美浜3号機も設置変更許可の公開審査はほぼ終えているが、3基とも構内ケーブルの耐火対策など再稼働に必要な条件が整うまでには相当の時間がかかる。
(電気新聞2016年6月22日付1面)