関西電力高浜発電所1、2号機の40年超運転が認可された。2030年度の電源構成(エネルギーミックス)の原子力比率20~22%という数字は、30基程度が東日本大震災前より高い8割の稼働率で動けば達成でき、稼働率7割なら必要な基数は増える。新増設・リプレースが現時点で想定されていない点を踏まえると、稼働率8割の場合、30年時点で運転40年未満の21基(建設中3基含む)の稼働と、40年以上となる25基のうち10基程度の延長運転が必要になる。今後、40年が迫る炉は電力自由化の中で経営判断を迫られるが、再稼働を巡る世論は割れており、訴訟リスクも顕在化した。エネルギーミックス達成への視界は開けているとはいえない。
「20~22%」は、原子力依存度を震災前より減らす方針の中で、安全保障を確保し、電力コストを減らすためのぎりぎりの比率として、設定された。日本政府の温室効果ガス削減目標「13年度比26%減」の達成にも必要不可欠。原子力では必要な30基程度のうち、現状、再稼働したのは2基にとどまっている。
一方で「20~22%」は総括原価料金規制が撤廃される電力自由化の下、投資回収に不確実性が漂う中で目指していく数字。競争が進む中でも必要になる使用済み燃料の再処理と廃炉については制度的な手当てをした。
一方で廃炉会計制度の見直しでは、料金規制の撤廃後に託送料金で廃炉費を広く薄く回収することを認める代わりに、原子力の電気の市場拠出を検討課題とする方向性が示されている。原子力の公益電源的な性格を強める流れだが、その中で事業者が原子力の運営方針をどう判断するかも「20~22%」の実現可能性に関わってくる。
原子力の電気の扱いやリプレースの是非は、来年のエネルギー基本計画の見直しとも相まって議論のテーマになりそうだ。2月の総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)基本政策分科会では経産省・資源エネルギー庁が、まずは原子力の社会政策を議論する方向を示したが「その先には国策民営や事業者との関係、こうした議論の見直しがおそらくある」(日下部聡長官)と踏み込んだ発言もあった。
(電気新聞2016年6月22日付1面)