▼…玄海3、4号機の審査進捗
原子力規制委員会が20日に関西電力高浜発電所1、2号機の許認可手続きを完了したことで、後続プラントの審査が徐々に動き始めた。時間切れを避けるため、高浜に専念していたリソースを他に振り分けられるめどが立ったためだ。その一番手が九州電力玄海原子力発電所3、4号機。九州電力は「資料提出の準備も整っている」とし、コメント回答を中心に残りの論点について対応していく方針を示す。
23日の会合では、九州電力が有効性評価の中で水素発生シナリオの一つとして導いた溶融炉心とコンクリートの相互作用(MCCI)について説明。感度解析の結果を提示し、電気式水素燃焼装置(イグナイタ)を使ってどう事象進展を防ぐかなどを報告した。
免震構造から耐震構造への見直しを表明している緊急時対策所については、「大きな問題点はない」(原子力規制庁担当者)。これにより、施設側審査のヤマ場はほぼ超えた格好だ。
同日の会合で九州電力は指摘事項に対する回答の一覧表も提出。このうち、「回答準備中」としたのが約50項目で、重大事故対策のほか、事故対策要員の力量管理や参集方法などを示す「技術的能力」、耐震・耐津波設計方針などが占める。規制庁はきょう28日の会合でも九州電力から残りの論点について、一通りコメント回答を聴取することにしている。
PWR(加圧水型軽水炉)陣営では、基準地震動(Ss)が確定し、施設側審査も「玄海と同じような進捗状況」(同)にある北海道電力泊発電所3号機が、今後会合で取り上げられる見込み。いずれも、資料準備をどれだけスムーズに進められるかが、設置変更許可の時期を占うことになりそうだ。
▼…"重量級"続き、疲労抜けず
先々週後半から先週前半にかけて、規制庁担当記者は"重量級"の取材が立て込んだ。島崎邦彦・前規制委員長代理と田中俊一委員長の面談、東京電力による炉心溶融(メルトダウン)公表遅れ問題、関電高浜1、2号機の延長認可などだ。
特に20日はせわしない一日に。定例会合では高浜の延長認可だけでなく、島崎氏による関電大飯発電所の地震規模再計算提案の扱いが議題となり、記者たちは「高浜担当」と「島崎担当」に分かれて対応に当たっていた。記者会見室も慌ただしい動き。午後3時半過ぎから定例会合後の事務方レクチャー、同4時半から延長認可証交付、同5時半から委員長会見と、規制庁職員が分刻みで会場設営に追われていた。
"重量級"対応が終わった先週半ば、疲れた表情の記者は多かった。公共料金の請求書を手にしていた全国紙記者は「支払いを済ませたら帰る」と強気の姿勢。日没までにはかなり時間があったのだが……。
▼…泊、地質関係で現地調査
審査会合はプラント関係が28、30日に予定されている。28日は九州電力玄海3、4号機が対象で、重大事故対策のコメント回答が継続される。30日は東電柏崎刈羽原子力発電所6、7号機が取り上げられる見通し。7月1日には地質関係審査の一環で、北海道電力泊発電所の現地調査が実施される。
29日には核燃料サイクル施設に関する審査会合もあり、日本原燃の使用済み燃料再処理工場の重大事故対策などが議題になる。
(電気新聞2016年6月28日付2面)