エネコミ

2016年7月配信

2016年 7月1日
[記者ノート]理屈に合わぬ「骨抜き」報道

 「こんなに安易に認めてしまっていいのでしょうか」
 関西電力高浜発電所1、2号機の運転期間延長が認可された20日、民放のニュースキャスターが冒頭のような感想を伝えた。
 直接取材していないキャスターには「安易」に映ったのかもしれないが、公開の審査会合を全て取材してきた記者たちにとっては原子力規制委員会、関電双方が「苦しんだ末の認可」にしか見えなかった。
 非難燃性ケーブルの耐火性能確保、機器・構造物の耐震評価手法など、審査会合の都度、関電の担当者が原子力規制庁の審査官から厳しい叱責(しっせき)を受ける場面が繰り返された。期限までに間に合うのかが危惧された時期もあった。規制庁職員にとっても担当記者たちにとっても、全く「安易」な行政判断ではなかった。
 初の延長認可を受けて目立ったのは「原則40年、骨抜き」という報道。背景には、40年を超えた運転は「例外中の例外」という意識があったようだ。
 しかし、東京電力福島第一原子力発電所事故を契機に改正された原子炉等規制法(炉規法)には、40年という運転期間が「原則」であるとは書かれていない。延長運転が例外であることを示す記述もない。
 「運転の期間等」を定めた炉規法43条には「(運開日から)起算して40年とする」「規制委の認可を受けて1回に限り延長することができる」と淡泊に記されている。「原則」でも「例外中の例外」でもないわけで「原則40年、骨抜き」になる理屈は成り立たない。規制委の田中俊一委員長が20日の会見で「原則とか例外という表現は政治的・社会的に言われていること」と指摘した通りだ。
 自戒を込めて、「原則40年」という表現には慎重でありたい。(晶)

(電気新聞2016年7月1日付2面)