原子力規制委員会は13日、島崎邦彦前委員長代理の提案を受けて実施した関西電力大飯発電所の地震動再計算結果をまとめ、基準地震動(Ss)を見直す必要はないとの結論で一致した。島崎氏は、地震想定に用いられた予測式では震源規模(地震モーメント)が過小評価になる恐れがあるとして、別の方式で再計算するよう規制委に要請。原子力規制庁が再計算したところ、大飯の審査で了承されたSsを下回った。石渡明委員は「審査では地震動が大きくなるよう安全側に見込んでいる。その範囲に収まっていることが確認された」と述べた。
島崎氏は6月16日、田中俊一委員長や石渡委員らと面談。この中で、断層面積から地震モーメントを求める「入倉・三宅式」で評価すると過小評価になるとの認識を示し、「適正な式で精査して頂くのが(Ssの妥当性確認の)第一歩ではないか」と指摘していた。これを受け、規制委は同月20日の定例会合で再計算することを決めていた。
規制庁は、関電が実施した地震動評価の基本ケースを、津波評価などに使う「武村式」という手法に置き換えて計算。13日の定例会合で提示した結果によると、原子炉格納容器や圧力容器、蒸気発生器などの固有周期(周期0.02~1秒)では、水平方向の最大加速度が644ガル、上下方向の最大加速度が405ガル。大飯の審査で了承された最大加速度856ガル(水平方向)を含むSs19波の範囲に収まることが確認された。
結果について石渡委員は「Ssは計算結果そのものだけで求めていない。短周期レベルを1.5倍にしたり、断層傾斜角を緩くするなど、地震動が大きくなるよう安全側に見込んでいる。(再計算結果が)その範囲に収まっていることが確認された」と説明。更田豊志委員も「もともと考慮した不確かさの中に収まっている。あらためてSsを見直す必要はない」とした。
田中委員長は、「この問題は打ち切る」とした上で、「入倉・三宅式」を使った強震動予測手法は「原子力発電所だけでなく、高層ビルや橋りょうにも使われている。それに疑義があるなら専門家の中できちんと整理されるべき問題」と主張。規制委の行政判断に反映するかどうかの前提として、学術界レベルでの議論が不可欠との認識を強調した。
(電気新聞2016年7月14日付1面)