エネコミ

2016年8月配信

2016年 7月28日
大飯Ss再計算問題、現状評価見直さず/規制委、島崎氏の提案退ける

 関西電力大飯発電所3、4号機の基準地震動(Ss)は過小評価の恐れが高いとして、島崎邦彦前原子力規制委員長代理が規制委に再計算を求めていた問題を巡り、規制委は27日の定例会合で、これまでの審査で大筋了承されたSsを見直さないことを決めた。島崎氏が主張する「過小性」の前提は、熊本地震の一部データに頼っており、田中俊一委員長は「都合の良いデータだけで真のごとく主張する姿勢は、科学者として全く納得できない。島崎氏の提案を素直に受け入れることはできない」と強く批判した。
 島崎氏は、関電が震源規模(地震モーメント)を割り出す際に使った予測式『入倉・三宅式』では過小評価につながると主張。6月、田中委員長らと面談し、大飯のSsを再計算するよう提案した。これを受けて原子力規制庁は、『武村式』と呼ばれる予測式に置き換えて計算を行い、7月13日の定例会合に結果を提示。審査を経ておおむね妥当と判断された大飯のSs(最大加速度856ガルを含む19波)を下回るとして、いったんはこの問題を打ち切った。
 しかし島崎氏はこの結果に納得していないとして19日、田中委員長らと再面談。Ssが「非常に大きくなる恐れがある」などと主張していた。
 27日の定例会合で規制庁は、『武村式』に置き換えて再計算した過程で、断層面上にあるはずのアスペリティ(強震発生領域)が、断層の総面積より広くなったりするなど様々な矛盾が生じたと説明。無理を重ねた計算結果を基に「大飯のSsの妥当性を議論するのは適切ではない」(櫻田道夫・原子力規制部長)との見解を伝えた。
 委員からも「この計算は意味を持った結果を与えるものではない。物理的に正しい数値を入れず、無理な操作を入れ込むことは科学的にやってはならないこと」(更田豊志委員)といった指摘が相次ぎ、現状のSsを変更する必要はないとの見方で一致した。
 田中委員長は、島崎氏の提案を受けた再計算の過程で、地震学の知見から逸脱した設定をせざるを得なかったことについて、「無理な計算をすると非現実的なものが出るというのが今回の一つの成果」と語った。その上で、島崎氏の姿勢を「都合の良いデータだけで真のごとく言うのは全く納得できない。そのことは、この場ではっきり言う。いろいろと宿題を与えられたが、提案は素直に受け入れられない」と厳しい口調で批判した。

(電気新聞2016年7月28日付1面)