エネコミ

2016年9月配信

2016年 8月23日
玄海3、4号安全審査が"詰めの段階"に/9月上旬にも現地調査

◆泊3、大飯3、4も終盤

 四国電力伊方発電所3号機が再稼働したのに続き、九州電力玄海原子力発電所3、4号機の安全審査も最終局面に差し掛かった。原子力規制委員会は玄海3、4号機の審査が詰めの段階を迎えているとして、9月上旬にも現地調査を実施する方針を固めた。九州電力による原子炉設置変更許可補正申請の「時期とクオリティー次第」(原子力規制庁)では、今秋以降にも新規制基準への適合を示す審査書案が固まる可能性が出てきた。BWR(沸騰水型軽水炉)では東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機が最も進んでいる。

 玄海は新規制基準が施行された2013年7月に審査を申請。同じ時期に申請したPWR(加圧水型軽水炉)では北海道電力泊発電所3号機、関西電力大飯発電所3、4号機と並んで最終盤に入っている。
 18日の審査会合で規制庁の櫻田道夫・原子力規制部長は「玄海はある程度審査が進んだ」として、現地調査を行う方針を表明。申請以降、3年余りを費やした議論を踏まえ「これまでの説明と齟齬(そご)がないかを最終的に確認する」(規制庁)考えだ。

 ◇「4ループ」で初
 規制委は、現地調査と九州電力の補正申請を受けて、審査書案の取りまとめ作業を本格化させる。これまでに九州電力川内原子力発電所1、2号機、関電高浜発電所3、4号機、伊方3号機と経験を積み上げたこともあり、「取りまとめにはそれほど時間はかからない」(規制庁)とする。審査書案確定の時期は「九州電力がいつ、どの程度の品質の補正申請を行うかがポイント。川内での苦労を踏まえ、適切なものが出てくることに期待したい」(同)。
 これまで審査に合格したPWRは全て蒸気発生器が3台の「3ループ」プラント。玄海3、4号機が合格すれば「4ループ」として初となる。
 玄海に続くのが泊3号機。重大事故対策などプラント関係で残る審査項目は、基準津波(想定津波高)引き上げに伴う耐津波設計が主要論点。審査を担う規制庁のチームは玄海と異なるため、2サイトを同時並行で審査することは可能だが、鍵を握るのは積丹半島西岸地形の成因など地震関係審査の進捗状況だ。規制庁関係者は玄海と泊の審査が並行して進むのではなく、玄海が先行するとの見方を示す。
 大飯3、4号機も残された論点は少ないが、規制委は関電の申請案件を巡り、11月末に運転開始40年の期限が迫る美浜発電所3号機の工事計画と延長運転認可に絡む審査をまずは優先させる姿勢だ。

 ◇柏崎刈羽が先行
 一方、BWRでは柏崎刈羽6、7号機、東北電力女川原子力発電所2号機、中部電力浜岡原子力発電所4号機、中国電力島根原子力発電所2号機、日本原子力発電東海第二発電所のプラント関係審査が断続的に続いている。この5発電所・6基がBWRの中でも先行組だが、柏崎刈羽以外に基準地震動(Ss)が確定したサイトはない。
 耐震評価手法の妥当性を巡る議論が長期化するとして、今年に入り昨夏からの「集中審査」体制は解消されたが、柏崎刈羽が先行している状況に変わりはない。審査書案を仕上げる段階で規制委が、再び柏崎刈羽に審査資源を集中投入する可能性もある。

(電気新聞2016年8月23日付1面)