鹿児島県の三反園訓知事は26日、県庁で九州電力の瓜生道明社長と会い、4月の熊本地震により県民の不安が高まっているとして、川内原子力発電所の一時停止と再点検を要請した。安全確認のための設備点検や周辺活断層の調査・検証のほか、避難計画への支援強化、地震などの災害時や事故時の情報発信の強化を求める文書を瓜生社長に手渡した。九州電力は、9月上旬までに回答する見通し。
三反園知事は文書手交に先立ち、「熊本地震を受け、川内原子力は大丈夫かという声が多い。県民の不安の声に応えるためにも、いったん停止し再点検、再検証をして頂きたい」と述べ、誠意ある対応を求めた。
要請文書では、安全性の点検に関して、特に原子炉圧力容器・格納容器や安全機能装置など7項目を入念に点検するよう求めている。
手交後、報道陣の取材に応じた瓜生社長は今後の対応について、「しっかり(要請の)内容を確認し、検討する」と述べるにとどめた。
一方、三反園知事は、要請への回答を「できるだけ早く頂きたい」と述べた。点検を求めた項目がクリアされたら稼働を認めるかや、立ち入り検査を行うかどうかは「要請に対する九州電力の対応をみて判断する」として、明言しなかった。
三反園知事は7月の知事選で川内原子力の一時停止・再点検申し入れを公約に掲げて当選。今月19日には周辺の避難道路や介護施設などを視察し、住民らの意見も聞いていた。
要請を受けて今後、九州電力は難しい対応を迫られる。
立地県の知事による停止要請は重いが、法的権限はない。熊本地震による川内原子力の揺れは極めて小さく、原子力規制委員会も安全上の問題はないとして運転継続を認めている。九州電力としては収支への悪影響を避けたいのはもちろんだが、事業者のみの判断で停止するわけにはいかないのが実情だ。
さらに、もともと川内原子力は1号機が10月6日、2号機が12月16日から定期検査に入る予定になっている。定検開始の1カ月前には規制委に申請する必要があり、1号機は9月5日が期限だ。定検の前倒しは日程的な余地がほとんどないほか、作業要員確保の面からも困難とみられる。
(電気新聞2016年8月29日付1面)