エネコミ

2016年9月配信

2016年 9月13日
九州電力・川内1、2号の緊急時対策所/「耐震」構造への変更議論が大詰め

◆規制委「判断の時期」

 ◇免震から見直し/規制要件以上の"ハードル"
 原子力施設で事故が起きた際の指揮拠点となる緊急時対策所(緊対所)について、免震構造から耐震構造へ設計変更する事業者が相次ぐ中、九州電力川内原子力発電所1、2号機の議論が詰めの段階に差し掛かっている。九州電力は当面、耐震構造の代替緊対所を使用し、将来的に免震構造の施設を建設する前提で原子炉設置変更許可を取得。川内1、2号機を再稼働させたが、その後計画を変更。耐震構造の緊対所に切り替えた。原子力規制委員会は「我々としても判断しないといけない」(更田豊志委員)時期に来ているとの見方を示しており、きょう13日の議論に注目が集まる。

 緊対所に求められる主要件は、「基準地震動(Ss)による地震力に対し、免震機能等により緊対所の機能を喪失しない」こと。規制委に審査を申請した複数の事業者が当初、免震構造の施設に緊対所を配備する計画を打ち出していた。
 ただ、審査の過程でSsが引き上げとなり、既設の免震施設では地震動に耐えられないとして、耐震構造へと見直すケースが多発。四国電力伊方発電所3号機や東北電力女川原子力発電所2号機、中国電力島根原子力発電所2号機、日本原燃の使用済み燃料再処理工場などだ。このうち伊方3号機は耐震構造の緊対所を前提に設置変更許可が下り、再稼働に至っている。規制要件で「免震機能等」と例示されているものの、耐震構造でもSsによる地震に耐えられるなどの要件を満たせば不許可とはならない。
 川内1、2号機も他の「免震→耐震」への変更と事情は同じだが、規制委が慎重な姿勢を示す理由は、いったん免震構造をつくる前提で許可を受けたにもかかわらず、その後に九州電力が計画を撤回したという点だ。(1)審査プロセスでの変更か(2)許可取得後の変更か――という違いだが、この差が審査に影響を及ぼしている。川内の緊対所を巡っては、規制要件に合致しているかどうか以上にハードルが高く設定されている感があり、原子力規制庁幹部は「(再稼働の前提となった)既許可のレベルを超えているかが我々の判断のベースになる」と説明する。
 「免震→耐震」に変更した事業者は、耐震構造の施設は豊富な設計・建設経験があり、免震より早期に完成できることを理由に挙げている。川内の場合、免震より耐震の方が2年程度前倒しで工事を終えることができるという。
 更田委員は8月末の会合で「(工期短縮の)2年をどう見るか。重要な施設を強化するわけだから、十分に確立された技術で強化したいという事業者の理由ももっともかな、という感想を持つ」とした上で、「我々としても判断しなければならない」と述べ、規制委・規制庁内部で考え方を整理する必要があるとの認識を示した。

(電気新聞2016年9月13日付1面)