エネコミ

2016年11月配信

2016年 10月21日
乾式キャスク導入促進へ規制のあり方再検討を/規制委・田中委員長、規制庁に要請

◆「過剰要求」の障壁懸念

 使用済み燃料を一時保管する乾式キャスクを巡り、原子力規制委員会が事務局に対し、規制の在り方を再検討するよう求めている。田中俊一委員長らは従来、プールに保管しておくよりも乾式キャスクによる貯蔵の方が安全上のリスクは低いと主張。電力会社にも乾式貯蔵を検討するよう促していた。一方、現在の乾式キャスクに対する規制要求が過剰になっており、これが導入促進の障壁の一つと映っているようで、原子力規制庁に「乾式貯蔵を安全上の観点からもっと促す措置についてぜひ検討してほしい」(田中委員長)と要請した。(編集委員・塚原 晶大)

 使用済み燃料の処分方法を問わず、世界各国では敷地内外での乾式貯蔵は潮流になっている。水中で冷却し、保管する大規模施設建設を選択したスウェーデンのような事例があるものの、米国やドイツなど主要国では乾式貯蔵を志向する国が多い。
 米国では今年4月、全米の使用済み燃料発生量の半分に相当する約4万トンを保管できる施設の建設を民間が米国原子力規制委員会(NRC)に申請。2021年に受け入れを開始する計画を打ち出している。
 日本でも先進事例がある。日本原子力発電東海第二発電所から出る使用済み燃料を取り出し、敷地内の乾式貯蔵施設で保管している。容器自体に(1)臨界防止(2)除熱(3)封じ込め(4)遮蔽――の機能が施されている上、貯蔵建屋も自然対流でキャスクから出る熱を取り除く設計が講じられている。電源・動力なしに冷却・除熱機能を維持できる仕組みだ。
 ただ、乾式キャスクは貯蔵容器と輸送容器を兼ねており、「輸送容器としては9メートル落下に耐えることといった要求が別途ある。型式を認証するには輸送容器としての規制手続きの中で確認していく」(規制庁)必要がある。
 こうした実態について田中委員長は懸念を示していた。今月5日の定例会合で「はっきり言うと(キャスクは)転がしておいたって特に問題ない」と指摘した上で、規制庁に「基準を少し合理的に検討して頂きたい」と求めた。
 更田豊志委員も「乾式貯蔵キャスクに過剰な保守性を持たせることで、かえって使用済み燃料プールにいつまでたってもたくさんの燃料が存在しているということになっている。結局、安全上の観点からは負の効果を与えている」ことを問題視。「十分な量の乾式貯蔵キャスクを用意して、なるべくプールに置かれている使用済み燃料の量は減らしていく方向をとってほしい」と述べた。
 日本では昨年10月、経済産業省が使用済み燃料貯蔵能力増強に向けたアクションプランを策定。これを受けて電力会社は敷地内外での貯蔵施設建設に向けた工程表を示した。海外の原子力事情に詳しい専門家は「世界ではほとんどの場合、敷地内での乾式貯蔵を選択しており、日本でもまずは敷地内貯蔵の増強を検討すべきだ」と指摘している。

(電気新聞2016年10月21日付1面)