原子力規制委員会は26日開いた定例会合で、火山噴火に伴う降下火砕物の影響評価について新たな方針を示した。海外事例を参考に火山灰の大気中濃度を現行の値から引き上げる。既に設置変更許可を取得したプラントにも再度評価を求め、ヒアリングで確認する。国内で公表された研究成果などを火山影響評価ガイドに取り入れることも検討する。
事務局の原子力規制庁は今月5日、関西電力美浜発電所3号機の設置変更許可に関するパブリックコメント(意見募集)の結果を規制委に報告。その中で1980年に米国で発生したセントヘレンズ山の噴火による火山灰の大気中濃度をより詳細に検討すべきとの指摘があった。濃度が高いとディーゼル発電機のフィルターなどで目詰まりを起こす可能性があるためだ。現在審査で使用している値に比べると、セントヘレンズ山で観測された大気中濃度は10倍程度になるという。
これを受け、規制委は今後、設置変更許可を取得済みの九州電力川内原子力発電所1、2号機、四国電力伊方発電所3号機、関電高浜発電所1~4号機についても美浜3号機と同様、セントヘレンズ山の噴火で得られた観測データを使って設備の影響評価を行うよう求める。結果はヒアリングで確認する。
また、4月に公表された火山灰の濃度評価などをテーマとした電力中央研究所、産業技術総合研究所などの報告書の精査も進め、火山影響評価ガイドに取り込むかを検討する。事業者からも意見を募る考えだ。
26日の定例会合で石渡明委員は、「火山灰の濃度は堆積量などにも影響する。現在の規制と濃度の間に矛盾がないかもきちっと検証する必要がある」と指摘した。
(電気新聞2016年10月27日付2面)