2020年以降の国際的な温室効果ガス削減の枠組み「パリ協定」がきょう4日に発効する。全ての国・地域が国連に提出した自主削減目標の達成を目指して対策に取り組み、目標は定期的に更新・検証する。17~18年にも詳細なルールが策定される。同じく4日にパリ協定を国会承認する日本は、電源構成(エネルギーミックス)に裏打ちされた「30年度に13年度比26%減」の削減目標を掲げている。対策の焦点はやはり、20~22%の発電電力量比率を見込んでいる原子力発電だ。
パリ協定には削減目標の達成義務はない。一方で削減対策をとる義務はある。天変地異など特殊事情で目標の前提条件が変化した場合は目標値の下方修正もあり得るが、そうでない場合は定期更新時に目標値を維持するか、引き上げるかの選択になる。
日本の26%減目標は、オイルショック時並みの大幅な省エネと「原子力比率20~22%、再生可能エネルギー比率22~24%、火力発電比率57%程度」という電源構成の実現に依拠している。パリ協定の発効により、まずは対策を着実に進める必要性が生まれている。
原子力比率を30年度に20~22%にするには、数字上は「40年超運転6基を含む29基が稼働率80%で動けば」(経済産業省・資源エネルギー庁)到達する。政府は原子力を「安定供給」「経済性」「温室効果ガス削減」に貢献する電源と位置付け、地元や国民の理解活動を丁寧に進めながら、新規制基準に適合したプラントのみを再稼働すると説明している。
一方で、司法が運転差し止めの仮処分決定を下す、また原子力に慎重な立地県知事の当選など、再稼働には数々の逆風が吹いている。また今は、電力自由化下での事業環境整備や、福島第一原子力発電所事故の費用増と負担などを巡る議論の渦中にある。
その中で一定の割合を維持するなら、最終的には原子力に対する社会の受容性が鍵になる。17年度のエネルギー基本計画の見直し議論や、パリ協定が規定する20年の削減目標の更新議論でも、原子力に焦点が当たるのは確実。国民理解を得る観点からは、まず、現在もこの先も透明性の高い議論を進めることが求められる。(山下 友彦)
(電気新聞2016年11月4日付1面)