エネコミ

2016年11月配信

2016年 11月10日
玄海3、4号機が審査合格/規制委の意見募集後に確定

 原子力規制委員会は9日、九州電力玄海原子力発電所3、4号機(PWR、各118万キロワット)が新規制基準を満たしたとする「審査書」案を了承した。きょう10日から30日間、パブリックコメント(意見募集)にかけ、問題がなければ正式に原子炉設置変更許可を交付する。審査書案がまとまるのは同社川内原子力発電所1、2号機などに続き5発電所・10基目。
 9日の定例会合で了承された。玄海3、4号機は新規制基準施行直後に適合性審査を申請した「先行組」プラントの一つ。九州電力は既に再稼働を果たした川内1、2号機の審査を優先させたこともあり、事実上の合格まで約3年4カ月を要した。出力が100万キロワット以上で、蒸気発生器が4基ある「4ループ」プラントに審査書案が示されるのは今回が初めて。
 当初、九州電力は基準地震動(Ss)を最大加速度540ガルを含む3波で申請していた。しかし、審査の過程で「震源を特定せず策定する地震動」のうち、2004年の北海道留萌支庁南部地震などを考慮。同620ガルに引き上げ、合計で5波とした。
 また、対馬周辺海域の活断層の連動、サイト北東を走る「西山断層帯」に関する知見などを織り込み、基準津波(想定津波高)も再評価。最高水位は取水ピット前面で海抜約4メートル、最低水位は取水口で同マイナス約3メートルに設定した。
 一方、非常時の対応拠点となる緊急時対策所(緊対所)を巡っては、申請段階では免震構造を採用する方針を掲げていたが、川内1、2号機と同様、工事が長期化することなどが判明し、計画を変更。新設する耐震構造の緊急時対策棟内に配置することを決め、了承された。
 審査書案では火山・竜巻といった自然事象のほか、施設側の審査項目でも基準に適合していることを確認した。
 意見募集は、通例では取りまとめに3週間程度かかるため、審査書が固まり、正式に設置変更許可が下りるのは年明け以降にずれ込む公算が大きい。9日の会合では平和利用に関する事項などで原子力委員会と経済産業相から意見聴取することも決定した。
 今後、九州電力は工事計画認可(工認)と保安規定変更認可を受ける必要があり、地元同意の手続きも控える。工認取得後の使用前検査も勘案すると、再稼働は来年度以降になる見込み。

(電気新聞2016年11月10日付1面)