エネコミ

2016年12月配信

2016年 11月16日
博多駅前道路陥没事故/九州電力、24時間態勢で停電復旧

 今月8日午前5時15分頃、福岡市のJR博多駅前で発生した大規模な道路陥没事故。最大807件の低圧顧客、15件の特別高圧顧客が停電したが、九州電力は24時間態勢で停電復旧作業に取り組み、9日午前9時すぎまでに全ての顧客への送電を完了した。台風や水害などを除けば「経験したことのないレベル」(清水順・福岡配電センター副センター長兼配電計画グループ長)の事故。迅速な復旧を可能にしたのは日頃培った技術力と、安定供給に対する強い使命感だった。(一場 次夫)

 8日の道路陥没では、九州電力の2万2千V系統と6600V系統の地下埋設電線ケーブルが損傷。直後の午前5時16分頃、マンションなどの低圧807件、商業施設・ビルなど特別高圧7件で停電が発生した。午前5時30分、同社は本店に非常災害対策総本部、福岡支社に非常災害対策本部、福岡配電事業所に非常災害対策部を設置し、対応に当たった。
 低圧の停電は他の6600V系統から送電することにより、午前9時36分までに解消した。一方、特別高圧の停電は計15件に増加。このうち8件は、陥没箇所から切り離しての送電や別系統からの送電によって、午後9時9分までに復旧することができた。
残る7件をどうするかが「今回の復旧計画においてポイントになった」(清水副センター長)。陥没で損傷した側にしか系統がつながっていなかったためだ。

 ◇予想外の事態
 損傷したのは「2万2千Vスポットネットワーク」と呼ばれる3回線一群のケーブル。1回線が断線しても残り2回線で供給できる信頼度の高い設備だが、完全に断線するという予想外の事態だった。
 このため、この7件がつながる系統を別系統と結ぶ「バイパス工事」を8日午後7時30分頃に開始。配電線路図から、両系統のマンホールが隣り合っている場所を探し出し、約3メートルの2万2千Vケーブルで接続した。9日午前1時44分、一部送電を開始。午前9時4分には全量送電を開始した。
 復旧工事には配電部門の社員延べ約500人、協力会社から延べ約120人が携わった。他部門からも、協力会社と合わせ延べ約350人が資機材の手配や関係各所との調整などに奔走した。
 現場では、持ち込む資機材を含め的確な判断の下で、手戻りのない円滑な工事が行われた。また、全社から高圧発電機車44台、工事用ケーブル車15台が集められ、電線ケーブルの損傷が広範囲に及び、迂回(うかい)送電ができない場合に備えて待機していた。

 ◇強い意志感じ
  復旧作業を振り返り、福岡配電センター福岡配電事業所の田中慶・配電技術グループ長は「現場配電社員の高い技術力と早期復旧に向けた強い意志をあらためて感じた」と話す。
 地下鉄延伸工事現場の地上部を通る市道に開いた穴は縦横約30メートル、深さ約15メートル。埋め戻され、15日午前5時、1週間ぶりに通行が再開された。
 九州電力では同日午後9時以降、本復旧のための開削工事に着手。3日程度かけて新たな管路を埋設した後、ケーブル工事を順次進める。工事完了の時期は未定。

(電気新聞2016年11月16日付9面)