エネコミ

2016年12月配信

2016年 11月18日
安全審査「合格」は10基に/BWR、依然見通しなく/議論長期化、やり直しも

◆PWR/大飯3、4進展の公算

 原子力規制委員会に新規制基準適合性審査を申請済みの計26基のうち、5発電所・10基が「基準に適合している」として「合格」の判断が示された。いずれもPWR(加圧水型軽水炉)で、関西電力高浜発電所1、2号機と美浜発電所3号機の3基は40年目以降の継続運転に必要となる延長認可も取り付けた。一方、BWR(沸騰水型軽水炉)は混沌(こんとん)とした状況。一時は東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機が先頭を走っていたものの、一部審査がやり直しになるなど先行きが見通しにくい情勢にある。
 PWRを保有する電力会社は規制委に対し、2013年7月の新規制基準施行と同時期に原子炉設置変更許可などの手続きを申請した。同月に申請したプラントのうち再起動まで至ったのは、(1)九州電力川内原子力発電所1、2号機(2)関電高浜3、4号機(大津地方裁判所の仮処分決定により停止中)(3)四国電力伊方発電所3号機――の5基。
 16日時点では、高浜1、2号機と美浜3号機に設置変更許可、工事計画認可(工認)、延長認可が交付されたほか、九州電力玄海原子力発電所3、4号機も基準に適合したことを示す審査書案が了承されている。

 ◇泊は未決着
 『13年7月申請組』のPWRでは、北海道電力泊発電所1~3号機、関電大飯発電所3、4号機が残っている。泊は積丹半島の成因を巡る議論が未決着なほか、新たに防波堤・防潮堤の耐性が論点に浮上。基準地震動(Ss)と基準津波(想定津波高)見直しにより防潮堤の液状化対策が必要になる可能性が顕在化してきた。このため北海道電力による影響評価と、それを受けた規制委の審査に一定の時間を要する見込みとなった。
規制委はこれまで、「玄海↓泊↓大飯」の順で審査を進める方針だった。だが、泊の審査が長期化する見通しになったことや、美浜3号機の延長認可審査終了を踏まえ、実質中断していた大飯3、4号機の審査を再開させる方針。原子力規制庁幹部は「関電も準備しているだろうし、我々事務方も大飯の審査に対応する準備はできている」と話す。大飯は地震・津波関係審査をほぼ終えている。重大事故対策などプラント関係でも大きな論点は見当たらない。玄海に次いで合格判断が示される公算が高まってきた。
 一方、BWRは先行きに「見通しがない」(田中俊一委員長)状況に陥っている。今夏頃までは柏崎刈羽6、7号機がBWRの「合格1番手」とみられていたが、1~4号機側の防潮堤における液状化対策が必要になったため、東電は3号機内に設置予定だった緊急時対策所(緊対所)を5号機内に変更する方針転換を図った。このため被ばく影響評価やアクセスルートなどの一部審査がやり直しに。東電は、緊対所変更に伴う審査上の説明資料を12月中に提出するとしているが、審査終了時期は不透明だ。

 ◇先頭集団は
 ここにきて審査が大きく前進しているのが日本原子力発電東海第二発電所。プレート境界型地震と巨大津波の影響評価が厳しく審査される太平洋側サイトの中で、Ssと基準津波が最も早く妥当と判断された。東海第二は非難燃性ケーブルの耐火性能などプラント関係で大きな論点が残っているが、地震・津波関係の審査はヤマ場を越えた。
 東北電力女川原子力発電所2号機もSsを巡る審査が詰めの段階に差し掛かりつつあり、今後のBWR審査は柏崎刈羽、東海第二、女川が「先頭集団」を形成しそうだ。規制委は、どこかを優先して進めるのではなく、準備が整った事業者から順次ヒアリングを実施していく方針。
 一方、中国電力島根原子力発電所2号機と中部電力浜岡発電所4号機はSs策定の前提条件を巡る議論が収れんしていない。東北電力東通原子力発電所1号機、北陸電力志賀原子力発電所2号機、Jパワー(電源開発)大間原子力発電所は敷地内断層や周辺地質構造に関する議論の進展が先行きを左右する。

(電気新聞2016年11月18日付1面)