フランス国内の原子力発電所で使われている鍛造製品に強度不足が指摘されている問題で、原子力規制委員会は22日、日本のプラントメーカーに納入されている鍛造製品には、炭素濃度が規格値を超える部分は残っていなかったとする評価結果をまとめた。原子力事業者が10月末に提出した調査結果を基に確認したところ、鍛造製品に含まれる炭素濃度がJIS規格の上限値である0.29%を上回る鋼材はなかった。規制委は仏原子力安全局(ASN)と今後も情報共有していく方針。
仏国内の原子力発電所18基の蒸気発生器(SG)などに使われる鍛造製品に、炭素濃度のむらができる『炭素偏析』が見つかった。鋼材は、仏メーカーの「クルゾ・フォルジュ社」と、日本の「日本鋳鍛鋼」が納入していた。日本のメーカーが納入した製品に炭素偏析の可能性が指摘されたため、規制委は軽水炉を保有する国内の原子力事業者に対し、鍛造製品を使っている場合にはJIS規格などで定められた炭素濃度を上回る可能性がないかどうかを調べるよう指示していた。
各社が10月末に提出した調査結果を踏まえ、原子力規制庁は「日本鋳鍛鋼」を含む鋼材メーカー3社の製造方法などを確認。原子炉容器上ぶたのようなドーム形状の鋼材については仏国内向けの製品よりも日本向け製品の方が切削量が多く、炭素濃度が高い部分が削り取られていることなどを把握。各発電所の原子炉容器上ぶた、SG、加圧器などに使われている鋼材中の炭素濃度がJIS規格の上限値を上回るものはなかった。
同日の規制委定例会合で原子力規制庁が「国内のプラントメーカーに納品されている鍛造製品に、規格で定められた炭素濃度を超えるような部分が残っているおそれはない」とする評価結果を報告、了承された。会合で更田豊志委員は「日本国内向けの鍛造製品に問題はないといえる。ただ、仏ASNにとってはホットな話題であり、ASNが取る対応も規制上の大きな関心事だ」として、引き続きASNなどとの情報共有を進める必要があるとの見解を示した。
(電気新聞2016年11月24日付1面)