九州電力川内原子力発電所1、2号機の緊急時対策所(緊対所)を免震構造から耐震構造に見直すことを柱とした原子炉設置変更許可申請について、原子力規制委員会は30日、「基準に適合する」とする審査書案を了承した。規制委は原子力委員会と経済産業相への意見照会手続き、一般からの意見募集(パブリックコメント)を経て、正式に許可判断を下す。
九州電力は新規制基準が施行された2013年7月の設置変更許可申請で、当面は耐震構造の代替緊対所を使い、将来的に免震構造の施設に機能を移す計画を盛り込んでいた。それを前提に審査が行われ、設置変更許可を取得。昨年に1、2号機を再稼働させた。だが免震装置の設計の成立性に見通しが立たなかったとして今年3月、耐震構造の緊急時対策棟内に緊対所を配備することを記した変更申請を行っていた。
変更申請に対する規制委の審査では、(1)緊対所の位置変更に伴うアクセスルートの妥当性(2)可搬型設備保管エリアの変更による事故対策の成立性(3)居住性――などが主な論点になったが、30日の定例会合で原子力規制庁が示した審査書案では、いずれの項目も「基準に適合する」との判断を示した。
緊対所変更と合わせて申請があった3系統目の常設直流電源設備設置と受電系統の変更についても基準に適合すると評価された。
審査書案に対するパブコメの要否を巡っては、田中俊一委員長を含む5人の委員間で見解が割れた。田中委員長は「(再稼働の前提となった既許可の中に)緊対所は含まれ、パブコメも済んでいる」として、実施する必要はないとの見解を示したのに対し、更田豊志委員は「(免震から耐震へと)単に“入れ物”が変わるだけではなく、アクセスルートなどにも関わる変更内容だ」と述べた。5人の委員で採決が行われ、田中委員長を除く4人がパブコメ実施を支持した。
(電気新聞2016年12月1日付1面)