エネコミ

2016年12月配信

2016年 12月8日
独の脱原子力政策「財産権侵害、国に責任」/連邦裁判所が賠償請求一部認める

 ドイツ連邦憲法裁判所は6日、東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて連邦政府が原子力の閉鎖を早めたことは「原子力事業者の財産権侵害に当たる」として、事業者の損害賠償請求権を一部認める判決を下した。急な政策変更によって損害を生じさせた国の責任を認めた格好だ。賠償額は示されなかったが、連邦政府に対し、賠償に応じるための関連法を2018年6月までに整備することを命じた。
 ドイツの連邦政府が脱原子力を法制化したのは2002年。原子力の運転期間を32年間に制限し、割り当てた発電量が尽きたプラントから順に閉鎖することを規定した。10年10月には運転期間を平均12年間延長することを決めたが、福島第一事故後の11年7月に撤回。旧型のプラント8基を即時閉鎖し、運転中の9基も22年までに順次閉鎖することを決定した。
 RWEとエーオン、バッテンフォールの原子力事業者3社は、急な政策変更による閉鎖の前倒しは財産権の侵害に当たるとして、連邦政府に損害賠償を求める訴訟を起こしていた。
 判決では、02年に割り当てられた32年分の発電電力量に達しないまま閉鎖を迎えたプラントと、運転延長が撤回されたことで安全対策のための投資が無駄になったプラントについて、損害賠償請求権を認めた。
 原告側の勝訴となった形だが、海外電力調査会の黒田雄二上席研究員は「事業者にとっては『喜び半分』ではないか」と話す。運転延長の撤回によって発電電力量が減少した分の「損害賠償請求権」は認められなかったためだ。
 事業者が求めた損害賠償額は約200億ユーロ(約2兆5千億円)ともいわれるが、黒田氏は大幅に目減りする可能性があると指摘する。

(電気新聞2016年12月8日付1面)