◆地熱など予見性向上策
低コストな太陽光発電と、導入が停滞した風力、地熱、中小水力、バイオマス発電の拡大に向けた仕組みの検討が大詰めを迎えている。「2017年度以降のFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)買い取り価格をどう設定するか」という観点で、有識者4人で構成する調達価格等算定委員会が10月に再開。これまでに事業用太陽光の価格入札制度の概要や、中長期の低減目標などが固まった。13日には各電源の価格を盛り込んだ報告書案を示す。
2030年度電源構成(エネルギーミックス)の再生可能エネ発電電力量比率「22~24%」を目指した対策の一環。
大型水力を除いた再生可能エネ電源は、比率を22~24%にするために導入量(キロワット)をそれぞれ今の2倍から3倍に増やす必要がある。半面、12年のFIT開始から4年間で国民が負担する買い取り費用は約2兆3千億円に膨れた。エネミックスでは電力コストを現状より下げるため、再生可能エネ拡大へ投じる費用を「3兆7千億円から4兆円」に設定。30年度までの14年間で残された「枠」は最大でも1兆7千億円だ。
◇両立へ
このために「再生可能エネの最大限の導入と国民負担の抑制の両立」が政策の方向性として示された。具体策をとるために、経済産業省・資源エネルギー庁は再生可能エネルギー特別措置法(FIT法)の改正に乗り出し、今年5月に通常国会で改正法が成立。一部を除いて来年4月1日に施行される。
法改正のポイントは5点挙げられるが、その中に「低コストな電源の導入」と「開発期間の長い電源の導入拡大」がある。前者は太陽光を指し、FITにより急拡大したもののコストがまだ高いため、買い取り価格の低減を進める。後者は風力、地熱、中小水力、バイオマス。運開まで期間が長くかかり導入が停滞したことから、事業の予見性を高めて拡大を促す趣旨だ。風力もコストが高いため、中長期の価格低減も重視する。
◇入札制
調達価格等算定委では、これらの実現に向けた仕組みを検討してきた。12月上旬までの会合で固まった事項は主に5点。(1)FITからの自立に向けた中長期のコスト低減目標(2)事業用太陽光の価格入札制の概要(3)17~19年度までの価格の一括設定(4)新たな買い取り価格の区分設定(5)リプレース用価格区分の新設――だ。
(2)は、17年度から試行することで競争を通じた価格低減を期待。18年度までは対象出力を特別高圧2千キロワット以上にすることや、入札量などを固めた。(3)は、事業用太陽光以外の再生可能エネに採用。一部の電源は価格を段階的に下げてコスト低減を促すとともに、事業の予見性を高める。(4)はコスト実態を反映して中小水力とバイオマスに設定。(5)は風力と地熱を対象に、普及促進の観点から新設する。
法改正のポイント5点のうち、残りの3つは「事業用太陽光の未稼働案件解消に向けた新認定制度の導入」「適切な事業実施を確保する仕組みの整備」「一般送配電事業者への買い取り義務者の変更」。これらはエネ庁の審議会で制度設計を終えた。
また、国民負担軽減に向けた「電力多消費産業向けの賦課金減免制度の見直し」は10月1日に完了し、来年度から適用される。
(電気新聞2016年12月9日付1面)