経済産業省は17日、1次・2次エネルギーの二酸化炭素(CO2)排出にかかる費用(カーボンプライス)が、日本は諸外国の中で最高水準との試算を有識者検討会で示した。燃料輸入価格やエネルギー諸税などを含む総費用での比較が重要という認識の下、産業用電力や、産業用天然ガスのカーボンプライスは世界で一番高いとした。これに炭素税が上乗せされれば企業の生産活動が海外に移り、移転先の国の排出量を増やしてしまう「炭素リーケージ」が起こり得るとの考えだ。
試算は日本エネルギー経済研究所が実施。17日に行われた有識者検討会「国内投資拡大タスクフォース」で、試算を盛り込んだ長期温室効果ガス削減戦略のたたき台の「最終整理案」が大筋了承された。排出量取引は海外導入国の事例から、制度設計の難しさなどを指摘。炭素税とともに、直ちに日本で導入する地合ではなく「今後も慎重な検討が必要」とまとめた。
試算によると、2015年の日本の産業用電力のカーボンプライス(電気代やエネルギー諸税などを含む)は電力使用量千キロワット時当たり約164ドル(約1万8500円)で、ドイツ(約145ドル)や英国(約143ドル)を抑え世界最高。
15年の産業用天然ガスのカーボンプライス(輸入価格やエネ諸税など含む)は、CO2排出1トン当たり約397ドル(約4万4800円)で、2位の韓国の1.6倍。国内でシェールガスを産出する米国の5.7倍にも上るとした。
最終整理案では企業の温室効果ガス削減について、国内・自社のみでの削減から、グローバル拠点での削減と、製品の生産から使用・廃棄に至るライフサイクル全体での削減に考えを移すことを提起。この考え方に沿い、鉄鋼、化学、電力、ガス、電機・電子など主要7業種の潜在的な排出削減貢献量を積み上げると、30年度に16億トン以上になるとした。30年度の日本国内の排出量目標(約10億4千万トン)を、大きく上回る貢献ができると見通している。
また、最終整理案は昨年12月の中間整理をベースに、気候変動の不確実性と共存する長期排出削減戦略の策定が必要などと提起した。
(電気新聞2017年3月21日付1面)