エネコミ

2017年4月配信

2017年 3月29日
大阪高裁が関西電力高浜3、4号機の運転認める/地裁仮処分を取り消し

 関西電力高浜発電所3、4号機の運転差し止め仮処分に対する抗告審で、大阪高等裁判所(山下郁夫裁判長)は28日、2基の運転を認める決定を下した。大津地方裁判所の仮処分決定は取り消され、関電が逆転勝訴。法律上は運転が可能な状態になった。東京電力福島第一原子力発電所事故後、運転差し止めを求める仮処分申請は各地で起こされ、地裁レベルでは判断が割れている。高裁による判断は、九州電力川内原子力発電所1、2号機の運転差し止め仮処分申し立てを退けた福岡高裁宮崎支部に次いで2例目で、いずれも原子炉の運転による差し迫った危険性は認められないとする決定となった。
 高浜3、4号機は原子力規制委員会による新規制基準適合性審査をクリアし、再稼働に必要な許認可を取得済み。3号機は2016年1月、4号機は同年2月にそれぞれ原子炉再起動に至った。しかし同年3月、大津地裁の山本善彦裁判長は新規制基準の合理性や地震想定に関する関電の説明が十分に尽くされていないなどとして、2基の運転を禁じる仮処分決定を出し、法的に稼働できない状況に至っていた。
 関電は大津地裁決定を不服として16年7月、大阪高裁に抗告を申し立て。約1020ページに及ぶ書面を提出し、地震想定や新規制基準の合理性などについて科学的知見に基づく主張を積み重ね、安全性が確保されていることを立証してきた。同年4月に発生した熊本地震を踏まえ、繰り返し強い揺れが発電所を襲った場合の設備の耐性も争点に浮上した。
 抗告審は16年12月に審理が終結していた。大阪高裁は住民側、関電側双方の主張内容を精査した上で関電の立証を認め、28日午後、大津地裁の仮処分決定を取り消す判断を下した。
 今回の決定により、2基の運転再開に対する法的な制約はなくなるが、1月に同発電所1、2号機の原子炉格納容器上部遮蔽壁設置工事中に発生したクレーン倒壊事故を受けて、福井県からは安全管理体制の総点検が求められている。関電はクレーン倒壊事故への対応を終え、地元理解を得てから燃料装荷など稼働に向けた準備に着手する方針。

(電気新聞2017年3月29日付1面)