◆電力4社がガスに対抗、セット戦略主流
都市ガス小売り全面自由化が、あす4月1日にスタートする。家庭、業務の小口分野には大手電力会社が新たに参入。LPガス会社などと組み、既存ガス会社よりも安い料金で顧客開拓を目指している。ただ、1年前に始まった電力小売り全面自由化と比べると、新規参入者の数は少なく、石油や通信など多様な業種からの参入もない。“閑散”ともいえる船出の背景には、LNG(液化天然ガス)の調達や保安などガス事業特有の難しさがある。(濱 健一郎)
都市ガス事業は年間10万立方メートル以上の範囲が既に自由化されている。これまでの自由化範囲は市場全体の6割で、4月1日以降は家庭用や小規模商店など小口分野が開放される。3月30日までに登録されたガス小売事業者は38者。このうち8者が新たに都市ガス事業を行い、小口分野にも販売する。
小口分野に参入するのは東京電力エナジーパートナー(EP)、中部電力、関西電力、九州電力の電力4社と、日本ガス(ニチガス)、レモンガス、河原実業のLPガス3社。LPガス3社は東電EPの卸供給先となっており、いずれの地域も実質的には“都市ガス会社対電力会社”の構図となっている。
主要な都市圏における都市ガス会社と電力会社の競争は始まっているが、地方での参入はなく、他業種への広がりもない。消費者の関心も薄いままで、電力全面自由化と比べると盛り上がりに欠けるという見方は否めない。新規参入者が増えないのは、LNGの卸取引市場などをつくらないまま自由化に踏み切ったためとみる向きが多い。
ただ、ガス全面自由化は都市ガスという狭い領域だけの競争ではなく、電気も含めた総合エネルギーサービス化の流れを一段と促している。新規参入の電力会社やライバルの都市ガス会社の多くは、ガスと電気のトータルで安さを競い合う戦略だ。今後は、ガスか電気といった単品商品だけでは、競争の土俵に上がれなくなる公算が大きい。
電気とのセット割引と早期割引で、大阪ガスの平均的な使用量の規制料金より13%安い料金を打ち出した関電は、申込件数が早くも10万件に達する勢いだ。一方の首都圏では、LPガス各社を率いる東電EPが7月に参入する計画。現在は小康状態だが、“総大将”の参戦により、夏以降は首都圏でも競争が本格化していくとみられる。
(電気新聞2017年3月31日付1面)