原子炉等規制法(炉規法)改正案が7日、参議院本会議で賛成多数で可決・成立した。改正案の柱となった原子力施設に対する検査制度の抜本的見直しでは、安全確保の一義的責任が事業者にあることが明確化された。原子力規制委員会は、事業者の全ての保安活動を監視して安全上の重要性から評価を行う。事業者が「規制基準を満たすこと」にウエートが置かれているとされた従来の考えから脱却し、事業者と規制機関はそれぞれの責任、役割を明確にしてより高い安全水準の実現を目指す。
新検査制度は、「事業者検査」で施設の基準などへの適合性を自ら確認する事業者に一義的責任を課し、規制機関は従来の検査を一本化した「原子力規制検査」で、事業者の取り組みを総合的に監視する。監視・評価システムは米国の「原子炉監視プロセス(ROP)」をひな型とし、保安活動の良好な事業者への検査は、立ち会い確認量を減らすなど、インセンティブを意識して検査にめりはりをつける。
検査官に発電所内の情報入手を容易にする「フリーアクセス」の権限も認めるが、問題箇所の発見には検査官の高い力量が求められることから、規制委では米原子力規制委員会(NRC)を参考とした資格認定のための研修プログラムを充実させる考えだ。
改正炉規法は、3年後をめどとする新検査制度への移行で全面施行となる。
検査制度見直しに関しては、今回は条文改正で「大枠」を示した形。新検査制度で検査すべき項目などを定めた基準・規則は今年度中に作成のペースが上がっていく見込み。
電力業界は「引き続き制度の詳細検討に積極的に協力する」(勝野哲・電気事業連合会会長)意向を示している。事業者検査と原子力規制検査が分離することで、第三者的な立ち位置にいる学会・協会の役割が従来に増して高まるとの指摘も出ている。
(電気新聞2017年4月10日付1面)