◆電源Ⅱの不足懸念、競争進展で加速も
電力広域的運営推進機関(広域機関)が3月末に取りまとめた供給計画で、周波数制御や需給バランス調整に活用する調整力が将来的に不足する可能性が示された。太陽光発電の導入が急速に拡大、調整力の必要性は高まる一方で、大手電力は需要の減少を見込んで経年火力の休廃止を進める計画。中央給電指令所からのオンライン指令で制御できる調整力はこの先減少していく見通しだ。広域機関は供給計画の取りまとめと併せて、調整力公募や新市場などを通じて調整力を確実に調達できる仕組みの必要性を経済産業相に提起した。(編集委員・小林 健次)
供給計画の取りまとめによると、10年後の発電設備容量に占める太陽光の割合は2割を超え、発電電力量では現在の約2倍の9%に増える見通しだ。一方、発電電力量に占めるLNG(液化天然ガス)火力と石油火力の割合は現在の50%から36%に減少する見込み。再稼働時期が不透明な原子力はほぼゼロで計上されており、その稼働状況によってはさらに下がる可能性がある。
◇約500キロワットマイナス
10年後までに火力の新増設は2千万キロワット程度計画されているが、休廃止はそれを300万キロワット上回る計画だ。特に東京、中部、関西の3エリアでは2022年度まで休廃止が新増設を上回るペースで進み、10年後には差し引き500キロワット程度のマイナスになる見通し。新電力のシェア拡大が見込まれる中、大手電力が自社の供給力を減らしていくためで、競争の進展状況によっては新増設の繰り延べや休廃止の加速もあり得る。
一般送配電事業者はそれぞれ、離島用を除く電源は保有せず、調整力は公募で調達している。最大3日平均電力の7%相当を専用電源(電源Ⅰ)として確保しつつ、オンライン制御できる小売り用の電源(電源Ⅱ)とも契約し、実需給断面で余力があれば活用する。
電源Ⅱは電力の品質維持とコスト削減の両面で一定の役割が期待されている。出力変動の大きい太陽光や風力の導入拡大などに伴い、調整力が7%で収まらないエリアがある。また、電源Ⅰは石油火力や揚水など相対的に可変費の高い電源が多いとみられ、電源Ⅱへの差し替えニーズは常時ある。
◇急場しのぎも困難
だが、発電事業者が電源Ⅱに応募する義務はない。オンラインで制御可能な火力が減少すると、託送契約上の給電指令で急場をしのぐことすらできなくなる。一般送配電事業者は広域機関との意見交換の中で、一定規模以上の電源に必要な機能を具備するインセンティブを与え、20年度をめどに創設される需給調整市場(リアルタイム市場)への拠出を促す仕組みが必要と提起した。
広域機関は経産相に提出した意見書の中で、今後創設されるリアルタイム市場や容量市場、既存の調整力公募などを通じて「調整力を確実に確保できる仕組みを整備していく必要がある」と明記。広域機関と連携して制度設計の検討を進めるよう促している。
(電気新聞2017年4月11日付1面)