◆賦課金は現状の倍に
電力中央研究所はFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)買い取り費用が2030年度単年で4兆7千億円になり、政府想定を最大1兆円上回るとの試算を示した。事業用太陽光発電が要因。電中研は30年度の導入量を政府想定と同じ5500万キロワットと設定したが、FIT開始初期に認定された高額案件の導入比率が政府想定よりも高まるため、買い取り費用が上振れすると想定している。買い取り費用から回避可能費用を引いた国民負担額(賦課金)は3兆6千億円となり、16年度の賦課金から2倍に上がると試算している。
試算は電中研社会経済研究所の朝野賢司主任研究員が行った。
政府は15年7月に、30年度の電源構成(エネルギーミックス)を策定した。この中では、東日本大震災後には電気料金が上昇し、FIT対象再生可能エネルギーも拡大すると想定。これを踏まえ、発電所の燃料費にFIT買い取り費用を加えた「電力コスト」を下げる目標を定めた。
具体的には30年度の電力コストを13年度比で最大6%ほど下げ、9兆1千億~9兆4千億円にする。これに対し、FIT買い取り費用は3兆7千億~4兆円の間に収めるとした。朝野氏の試算は同費用を7千億~1兆円規模で上回る。
朝野氏の試算は、30年度の事業用太陽光発電の買い取り費用を、FITが始まった12~15年度の設備認定量実績を基に算出。「12年度40円/キロワット時」「13年度36円/キロワット時」など買い取り価格別の認定量割合を、そのまま30年度の導入量想定に比例配分した。その結果、「40円/キロワット時」など高額案件の導入比率が政府想定より高くなり、買い取り費用が上振れすると説明している。
政府の想定費用の前提については詳細は明らかではないが、買い取り費用の試算に差が出る理由として、政府想定が高額案件の認定抹消が比較的多く進むことを前提にしているためとみられる。
朝野氏は、30年度までのFIT買い取り費用と賦課金の累積額も試算。それぞれ59兆円、44兆円に上るとした。
(電気新聞2017年4月18日付1面)