改正原子力損害賠償・廃炉等支援機構法(賠償廃炉機構法)が10日、参議院で与野党の賛成多数によって可決、成立した。福島第一原子力発電所の廃炉を着実に実施するため、東京電力ホールディングス(HD)に対し、廃炉費用の積み立てを義務付ける。これにより、資金確保に関する法的な枠組みが整ったことになり、国の関与も強めながら長期にわたる廃炉作業に臨む。年内の施行を目指す。
改正法は東電HDに対し、廃炉に充てるための必要な資金を毎年度、原子力損害賠償・廃炉等支援機構(賠償廃炉機構)に積み立てることを義務付ける。30~40年にわたって必要となる巨額の廃炉費用が不足することがないよう、制度的な手当てを行い、円滑な作業につなげる。
東電HDは賠償廃炉機構を通じ、経済産業相に実施計画を提出。認可を受けた上で、賠償廃炉機構が毎年度積立金の額を決定する。作業の進捗に応じて取り崩す際には両者が共同で計画を作成し、経産相の承認を受けることが必要だ。
また、監督権限も強化する。積立金の額の認可などに当たって、必要と認められた場合は、経産省や賠償廃炉機構の職員が東電HDの本社・現場に立ち入り検査を行うことも可能にする。
衆参両院の付帯決議では、積立金の額を適切に設定するとともに、積算根拠や費用負担の在り方を丁寧に公開することを要望。賠償費用に「過去分」を設け、託送料金制度を活用して回収する仕組みについても説明を尽くすよう求めたほか、賠償廃炉機構のガバナンスを確保し、資金管理の透明性を向上させることなども盛り込んだ。
経産省に設置された「東京電力改革・1F問題委員会(東電委員会)」は昨年末にまとめた提言で、福島第一の事故対策費用を、従来の約2倍となる21.5兆円と試算。このうち、廃炉費用は8兆円に上る。東電HDは毎年5千億円を確保することが求められる。
(電気新聞2017年5月11日付1面)