エネコミ

2017年5月配信

2017年 5月19日
関西電力・高浜4号機、1年3ヵ月ぶり起動・臨界/22日にも送電再開

◆月70億円収支改善/競争力強化に弾み

 関西電力高浜発電所4号機が17日午後5時、1年3カ月ぶりに起動し、18日午前6時には臨界に達した。今回の起動は並列作業中のトラブルによる自動停止、その後の大津地方裁判所での運転差し止め仮処分決定など、紆余(うよ)曲折を経ての“仕切り直し”といえ、関電は安全で安定した運転のために万全の態勢で作業を進めていく考え。一方、再稼働に伴う収益改善効果は大きく、今後の料金値下げによる関電の競争力強化は、全面自由化された電力・ガス小売市場に影響を与えそうだ。(浜 義人)
 午後5時からの起動作業は中央制御室にいる運転員に加え、自治体担当者や原子力規制庁の職員ら計56人が見守った。運転員は炉内の制御棒の位置やホウ素濃度などを確認しながら、慎重に作業を進めた。
 関電の大塚茂樹執行役員・原子力事業本部副事業本部長は、一連の作業を原子力研修センターで報道陣らとモニターで見届けた。17日午後5時半から開いた会見で、大塚氏は「ようやく原子炉が起動した。安全最優先に、原子炉を運転していかないといけないという緊張感が高まっているというのが、現在の偽らざる気持ちだ」と力を込めた。
 高浜発電所では、トラブルによる自動停止や2号機でのクレーン倒壊事故など、地域住民からの信頼を損ないかねない事象が続いた。これに対して、大塚氏はあらためて謝罪した上で、再発防止対策などを分かりやすく住民らに説明するとともに、「安全に運転する実績を示すことが重要だ」と強調した。

 ◇司法リスクも
 一方、司法判断による稼働停止という「司法リスク」の存在も、2016年3月の大津地裁の決定により顕在化。17年3月に大阪高等裁判所で決定が取り消されるまで運転できない状態が続いたことについて、大塚氏は「今回の大阪高裁での判例がリーディングケースになり、裁判所の判断が落ち着いていくことを願っている」と話した。
 高浜4号機では工程通り順調に進めば、22日午後2時頃に発電機を並列し送電再開となり、定期検査の最終段階となる調整運転を開始する予定。その後は段階的に出力を引き上げながら、試験・調整を行い、25日には定格熱出力一定運転に入る見通し。営業運転の再開は総合負荷性能検査を経て、6月中旬を目指している。
 一方、高浜3号機でも再稼働に向けた作業が順調に進行中。既に燃料装荷は完了し、現在は原子炉容器の組み立て作業などを行っている。関電は原子炉の起動と送電再開を6月上旬と想定している。

 ◇値下げ実施へ
 高浜3、4号機の再稼働により、関電は月70億円程度の収益改善効果を見込んでいる。財務に与えるインパクトは大きく、経営基盤の強化につながる。また、今夏以降には値下げも実施される見込み。競争の源泉となる安価な電気を確保することで、エリア内はもちろん、エリア外に対してもどのような営業戦略を打ち出すか、他の電力大手などから注目が集まっている。さらに、16年度期末に5年ぶりに実施した配当の増配も視野に入るほか、社員のモチベーション向上につながる給与水準の回復も想定される。
 これらを実現していくための大前提になるのが、安全で安定した運転の継続。大塚氏は会見で「会社全体としては、安定で低廉な電源となる原子力発電所を動かす意義は深い。しっかりと安全を確保することが大事だ」と訴えた。

(電気新聞2017年5月19日付1面)