経済産業省は、昨年4月に発生した熊本地震の教訓を踏まえ、発電機車への燃料供給体制の構築に取り組んでいる。全国の電力会社からの応援を受け、熊本地震では過去に例のない規模の発電機車が投入されたが、給油施設に関する情報が不足していたため、現場で混乱が生じるケースがあった。このため、あらかじめ給油施設の供給能力や設備の保有数、輸送ルートなどを関係者間で共有し、国や自治体が一体となって復旧に当たる仕組みを早ければ今夏をめどに整える。
昨年4月16日の熊本地震の本震では、最大47万6千戸で停電が発生。このうち、阿蘇山近傍の一部エリアでは電力9社から計169台の高圧発電機車が投入され、全国で初めて面的送電が実施された。4月28日に商用電源へ切り替わるまで、応急送電によって復旧を下支えした。
◇現場で混乱も
ただ、応援に集まった電力会社では、被災地域のどこにサービスステーション(SS)や小口配送拠点があるか分からなかったり、小型ローリーなどの保有台数、タンク容量、高速ノズルの有無といった供給能力を十分に把握しきれていなかった。
また、国や応援に向かった複数の電力会社から石油の元売り・小売事業者に対して重複して協力依頼がなされたため、混乱が生じるケースが散見された。加えて、被災地域の電力会社が通常取引している石油販売事業者のみでは、継続的な送電に必要な燃料を十分に確保することが難しい局面もあった。
このため、経産省では昨年夏頃から、資源エネルギー庁が中心となって電気事業連合会、全国石油商業組合連合会(全石連)と議論に着手。災害時の燃料供給体制の在り方について検討を深めてきた。
◇夏めどに整備
具体的には、被災した電力会社が通常取引している取引先からの調達が困難な場合、全石連が作成した石油販売事業者リストのうち、より広範な事業者にも連絡できる体制を敷く。リストにはSSの場所のほか、軽油の保管量や設備保有数などが記載されているが、機密性が高く、「現状では電力会社との共有が進んでいない」(経産省)のが実情。相互に情報を交換し、日頃から連携を密にする。
自治体や国も支援に回る。電力会社と販売事業者での調整がうまくいかない際には、都道府県に協力を依頼。それでも対応が難しかったり、自治体をまたぐ場合にはエネ庁が間に入り、全国組織である石油連盟、全石連に調整を求める。エネ庁は電力会社からの報告を受けた時点から全体の状況把握に努める。
経産省では、具体化に向けた検討を今後も継続し、早ければ今夏までにスキームを構築する。販売事業者リストの共有に関しては、関係者間で協力協定を結ぶことも視野に、さらなる連携の深掘りを目指す。
(電気新聞2017年5月30日付1面)