エネコミ

2017年6月配信

2017年 6月15日
使用済み燃料の乾式キャスク貯蔵、検討広がる/廃炉、安定運転に不可欠

◆導入促進へ基準簡素化も

 原子力発電所から出る使用済み燃料の貯蔵能力拡大が大きな課題になる中、電力各社は敷地内外での乾式キャスク貯蔵施設建設に向けた検討を進めている。日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)へ搬出するまでの間、発電所内のプールで保管・冷却するのが一般的な貯蔵方法だが、貯蔵容量が逼迫すれば、円滑な廃炉にも安定運転の継続にも支障を来しかねないためだ。東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故を機に、乾式キャスク貯蔵の安全性がクローズアップされたこともあり、原子力規制委員会も基準の簡素化に向けた検討に乗り出した。

 ◇除熱機能維持
 日本原子力発電東海第二発電所の「使用済燃料乾式貯蔵施設」。プールで7年以上冷やされた使用済み燃料61体を収納した金属キャスクが並ぶ。キャスク表面温度は手で触れても問題はない熱さ。建屋の排気・吸気口を通じ、キャスクの熱は自然対流によって取り除かれる。仮に、電源を喪失しても除熱機能が損なわれることはない構造だ。キャスク自体にも(1)除熱(2)閉じ込め(3)遮蔽(4)臨界防止――の4つの安全機能が備わっている。
 福島第一原子力発電所事故以降、乾式キャスク貯蔵には高い関心が集まっている。廃炉の円滑化にも安定運転継続にも、使用済み燃料貯蔵能力増強は欠かせない中、冷却・除熱に電源を必要としないという利点があるためだ。
 政府は2015年10月、「使用済燃料対策に関するアクションプラン」を提示。電力会社に対し、貯蔵能力拡大に向けた計画策定・公表を求めた。これを受けて、浜岡原子力発電所敷地内での乾式キャスク貯蔵施設建設を公表している中部電力以外にも、敷地内外での乾式貯蔵施設の確保を模索する動きが加速し始めた。
 四国電力は伊方発電所1号機の廃止措置計画認可申請に合わせ、敷地内での乾式貯蔵施設の建設を検討する方針を表明した。九州電力は玄海原子力発電所の燃料プール貯蔵能力を拡張する「リラッキング」を継続して検討する一方、乾式貯蔵についても技術的な調査を実施している。

 ◇一律の地震動
 一方、安全性の観点から規制委も乾式貯蔵を促す方策の検討に着手した。建設地点ごとに基準地震動(Ss)を設定するような規制の枠組みが導入の妨げになるとみて、「全国一律の地震動」という考え方を取り入れる。Ssを導き出すには敷地周辺の地質構造や活断層の長さ、地下構造などの評価・審査に数年単位の期間を要することがある。
 「全国一律の地震動」を適用することで、乾式貯蔵施設の審査にかかる手続きを簡素化する。規制委は基準見直しの検討チームを立ち上げており、今夏をめどに新たな基準案を取りまとめる方針だ。

(電気新聞2017年6月15日付1面)