九州電力は30日、2016年4月の熊本地震本震で被害にあった送電設備の復旧を完了した。一の宮・高森地区(熊本県阿蘇市、高森町、南阿蘇村)では、大規模な土砂崩れが発生し、6万6千Vの黒川一の宮線と高森分岐線が使用不能に陥り、約3万3千戸が停電した。九州電力は仮送電線ルート1回線での仮復旧を16年4月27日に完了したものの、2回線化する本復旧工事が喫緊の課題だった。16年11月に開始した本復旧工事は、台風シーズン前に計画通り完成した。
本復旧工事では、黒川一の宮線(亘長3.86キロメートル)で14基、高森分岐線(同1.08キロメートル)に1基の計15基の鉄塔を新設。高森分岐線では既設鉄塔2基を流用した。鉄塔の高さは平均約50メートル。本復旧ルートは震災以前の送電線ルート近傍をベースに決めた。地表踏査や地盤調査の結果を考慮して、断層区域を避け安定箇所にルートを設定した。
また、住宅密集地やゴルフ場を迂回(うかい)するなど周辺環境に配慮したルートとなっている。この本復旧ルートと仮復旧のルートが接近、あるいは交差する箇所が4カ所あったため、いったん別ルートを建設して対処した。
熊本地震後、仮復旧が完了するまでの間は、全国9電力の応援を得て、高圧発電機車169台による応急送電が展開された。
(電気新聞2017年7月3日付1面)