エネコミ

2017年7月配信

2017年 7月7日
新規制基準施行4年「合格」漸増も…今後減速か/審査の人的資源に限界

 東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた実用炉の新規制基準が施行され、あす8日で4年がたつ。この間、原子炉設置変更許可を申請した26基のうち「合格」したのは12基で、いずれもPWR(加圧水型軽水炉)だった。新規制基準の施行後を1年ごとに区切った場合、「合格」プラントは0、4、3、5基となり、この1年が最多。ただ、現在の審査の進み具合から想定すると、今後のペースダウンは避けられない見通しだ。

 ◇効率化に言及も
 安全審査でPWRに後れを取る形となっているBWR(沸騰水型軽水炉)では、東京電力柏崎刈羽原子力発電所6、7号機が「合格」第1号へ技術的審査が終盤に入っているが、後続プラントの大部分は地震・津波関係を中心に議論が足踏み状態にある。
 審査の効率化を巡っては、次期規制委員の山中伸介氏が6月13日の規制委参事就任時に報道陣の取材に応じ、「安全が基本になるが、規制には適切なスピード感が必要と思う」とやや踏み込んだ発言をした。一方、田中俊一委員長は翌日の定例会見で、審査の長さは結果論の側面があるとの認識を示し、「事業者側の対応にもよることも、これまでの実績で明確になっている」と指摘した。
 実際、国会答弁などでも規制委側は審査進捗について「事業者の対応によるところが大きい」と言及することが多い。この場合の対応とは、審査への準備状況全般を指すとみられるが、審査がスムーズに進まないケースでは、安全性評価などを巡り事業者側、規制委側の見解が平行線をたどっていることが背景にある。
 また、敷地周辺地盤を巡って議論が長期化していた北海道電力泊発電所3号機や、中国電力島根原子力発電所2号機の審査では、規制委側の主張に従って事業者が評価を見直す方向へシフトしつつある。これらの実情を踏まえると、規制側の主張に沿った「対応」を事業者が迫られ、結果として審査進捗につながるような図式となっている。議論の健全性という観点からは疑問も残る。原電や東北電力に対して、規制委側が申請プラントの中で審査の優先順位付けを求める動きもここにきて目立っている。

 ◇検査改革も重く
 この1年で「合格」プラントは5基を数える一方、新規の審査申請は1年半以上出ていない。それでも審査要員のマンパワーの余裕は依然ないという。更田豊志委員は、「特定重大事故等対処(特重)施設の審査にかなりの力を入れている」と指摘。同施設の審査は機微情報を扱うため、非公開で行われる。そうした要因もあって、公開審査が停滞気味に映るのではないかと分析する。
 原子力規制庁幹部も、「(審査要員の)増員は求めたいが、柏崎刈羽の見通しが立ったからといって、審査体制を見直すという議論にはならないだろう」と話す。規制庁では3年後の検査制度見直しに向け、検査要員の強化にも乗り出しており、審査だけに人的資源を割きにくい事情もあるとみられる。

(電気新聞2017年7月7日付2面)