▼…なかなか進展しないトリチウム水処分
先週の原子力規制委員会で多く話題に上ったのが、東京電力福島第一原子力発電所に貯留されている浄化処理済み水(トリチウム水)。トリチウムは水と分離させることが難しい核種で、世界の原子力施設では日常的に海洋放出されるが、事故炉からの放出は社会的な合意形成が課題となる。
東京電力ホールディングス(HD)の川村隆会長と小早川智明社長を招いた10日の臨時会議では、トリチウム水の処分などについて、田中俊一委員長が「東電の主体性がみられず危機感を持っている」と指摘。12日の定例会見でも住民理解の醸成など、東電の姿勢や主体性を確認していく意向をあらためて示した。
この話は他電力との議論の場にも及び、北海道電力の真弓明彦社長を招いた12日の臨時会議では、更田豊志委員が「泊(発電所)でも運転すれば、トリチウムを含む水を海洋に放出する。見解を伺いたい」と質問。阪井一郎副社長が「いつまでもためておくことには限度がある。自然界が影響を受けないレベルで海洋放出していくしか方法はない。少なくとも泊では(運転時に)原子炉保安規定で定めた管理値に抑え、放出している」と答える一幕もあった。
この問題については、田中委員長を中心に規制委が何年にもわたって「海洋放出は避けられない」との主張を続けてきた。具体的な進展がみられない危機感からか、田中委員長は東電に対し、国の結論に先立ってトリチウム水放出の決断ができるか問う考えを示唆。北海道電力との臨時会議では「全電力の中で何が大事なのか、発信して頂きたい」と電力業界に対するメッセージともとれる発言を行った。
まず一歩出るべきなのは国ともいえるが、世論などを鑑み、決断できない姿を容易に想像できてしまう。たまり続けるトリチウム水の問題を解決するためには、国、事業者、規制委などがそれぞれの役割をきっちり果たすことが重要である。
(電気新聞2017年7月18日付2面)