エネコミ

2017年8月配信

2017年 7月31日
地層処分の科学的特性マップ公表、国土の6割「好ましい」/今秋から説明会

◆福島、青森は除外

 政府は28日、高レベル放射性廃棄物の地層処分の適性を4段階に分け、日本地図に示した「科学的特性マップ」を公表した。「好ましい特性が確認できる」地域は国土の約6割に上った。このうち、「輸送面でも好ましい」地域は国土の約3割、自治体数では約900とした。火山・活断層の近傍などは除外した。実施主体の原子力発電環境整備機構(NUMO)は、今秋から適性のある地域により重点を置き、説明会や対話活動に取り組む。東京電力福島第一原子力発電所事故からの復興を優先させるため、福島県内では対話活動を行わない。(6面にマップ、関連記事)

 同日開かれた最終処分関係閣僚会議で、マップの公表を決定。全国の自治体に通知した。提示後に経済産業省内で報道陣の取材に応じた世耕弘成経産相は「長い道のりの第一歩だ」と表現。「国民の皆さまとしっかり対話し、理解頂ける取り組みを地道に続けていく」と強調した。
 マップは地球科学的・技術的な観点に基づき、地層処分の適性を4色に塗り分けた。火山・活断層の近傍や隆起・侵食が大きい範囲は不適格としてオレンジ色で表現。同様に油田・ガス田など資源の存在が推定されるエリアも、将来、人間が立ち入る恐れがあることからシルバーに色分けし、適地から外した。
 いずれにも該当しない場合は、「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」に分類。グリーンに塗り、そのうち海からの距離が約20キロメートル以内と高レベル廃棄物の輸送が容易な沿岸部は濃いグリーンで表現している。グリーンは国土の約3割、濃いグリーンも同様に約3割を占めた。
 今秋から、経産省・資源エネルギー庁とNUMOは全国規模の説明会や対話活動に着手する。マップの意義や位置付けなどを示すことで、国民的な議論を醸成したい考えだ。対象は全国だが、より適性の高いとされた沿岸部を中心に重点的に実施する。
 また、福島第一事故からの復興の妨げとならないよう、福島県は対話活動の対象にしない。最終処分地を設けないと歴代の政府と確約してきた青森県にも協力は求めない方針という。
 国民的な理解の深まりを見極めつつ、国は複数の地域で調査を受け入れてもらうことを目指す。自治体が決まった後は文献調査に2年、ボーリングなど概要調査に4年をかけ、地下施設で詳細を確認する精密調査を14年程度行った上で、最終処分地を決定する。

(電気新聞2017年7月31日付1面)