総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)基本政策分科会(分科会長=坂根正弘・コマツ相談役)は9日に会合を開き、エネルギー基本計画の見直しに向けた議論に着手した。経産省・資源エネルギー庁は、東日本大震災からの6年間で起きた情勢の変化、2030年に向けた電源ごとの課題を整理。委員からは原子力の扱いを国が明確に示すべきといった意見が相次いだ。同分科会では年度内の取りまとめを目指す。
冒頭あいさつした世耕弘成経産相は「30年の目標に向けた取り組みはいまだ道半ばだ」と指摘。「私としては(計画の)骨格を変えることはないと思っているが、この6年の状況の変化と成果を踏まえ、目標を着実に実施するにはどうすればよいかという視点から、活発に議論頂きたい」と呼び掛けた。
事務局のエネ庁は原油価格の下落や国内外での再生可能エネルギー価格の低下、電気自動車(EV)の普及といった状況変化を概観。エネルギー源ごとの課題としては、再生可能エネの高コスト構造の解消と調整力の確保を挙げたほか、原子力では社会的信頼の回復が最重要と強調した。
これに対し、委員からは計画の見直し自体について、「前回策定から3年間での変化、今後3年間で変化が予想される点は取り込むべき」(増田寛也委員)といった声が多数を占めた。一方、30年度の電源構成(エネルギーミックス)は「まだ12年残っている中で、数字を変える必要があるのか」(秋元圭吾委員)といった意見も出た。
また、原子力を巡っては、原子力規制委員会の審査によって現状では再稼働が5基にとどまるなど進捗が遅い点を複数の委員が指摘。橘川武郎委員は「正々堂々と新設・リプレースの議論をしないと原子力発電所が日本から消えてしまう。依存度を下げながら、そうした検討も進めるべき」と提起した。
一方、経産省は今月30日に「エネルギー情勢懇談会」の初会合を開き、2050年までに温室効果ガス排出を80%削減する長期目標の実現に向けた検討を始める。「従来の取り組みの延長では実現は困難」(エネ庁)との考えから、原子力を含めゼロエミッションにつながるあらゆる選択肢を探る。
月1回のペースで会合を重ね、有識者からのヒアリングなどを行う。進捗状況は分科会とも共有し、同様に年度内をめどに議論を取りまとめる。「パリ協定」の発効を踏まえ、国連に提出する長期戦略の策定議論にも生かしたい考えだ。
(2面に委員発言要旨)
(電気新聞2017年8月10日付1面)