エネコミ

2017年8月配信

2017年 8月17日
IAEAが2050年の原子力開発見通し/現状並み回復予想、アジア中心に増加

 国際原子力機関(IAEA)は2050年までの世界の原子力発電所の開発見通しをまとめた。各国の原子力政策にほぼ変更がない「低開発ケース」と、現状の経済成長率と電力需要増加率が続くことを前提にした「高開発ケース」の2シナリオを提示した。16年末の設備容量実績3億9200万キロワットと比べて、低開発ケースでは40年までに15%減少するが、50年には16年末並みに戻ると予測。高開発ケースでは50年に16年末比で約2.2倍の8億7400万キロワットになり、特に中央・東アジアでの増加率が高いとした。
 低開発ケースは、各国の原子力開発目標が全ては達成されない「保守的だがもっともらしい」予測だとした。予測によると、16年末の設備容量実績と比べ、30年までに12%減の3億4500万キロワット、40年までに15%減の3億3200万キロワットになるが、50年までに16年末実績並みに戻る。
 地域別の傾向をみると、北米や東欧を除く欧州各国で設備容量が減少し、アフリカや西アジア諸国で若干増える。中央・東アジア諸国では50年までに設備容量が現状比43%増と顕著に増える。
 現状は、世界で運転中の447基の半数以上が運転開始から30年を超えている。廃炉が進む一方で、50年までに3億2千万キロワットの新設を見込み、全体では50年までに16年末実績レベルに戻るとみた。
 一方、高開発ケースは、極東地域で原子力がコスト効率的で温室効果ガスの削減に貢献できる選択肢とみなされ、開発が進むと予測。設備容量は30年までに16年末比42%増の5億5400万キロワット、40年までに同83%増の7億1700万キロワットになるとした。
 中央・東アジア諸国は40年までに現状比2.9倍、50年までに3.5倍になる。北米では50年までに若干減少する。東欧を除く欧州も当初は減少に向かうが、50年までに現状(1億1300万キロワット)と比べて若干増え、1億2千万キロワットになる。
 また、IAEAは現在、原子力発電所を運転中の30カ国のうち、13カ国が発電所を新設中か、過去に建設を一時中断した発電所の完工を目指しており、16カ国に新設計画か構想が存在するとした。

(電気新聞2017年8月17日付1面)