エネコミ

2017年9月配信

2017年 9月5日
原子力総合防災訓練で367機関が連携確認/九州電力、住民避難支援も

 政府の2017年度原子力総合防災訓練が3、4日に佐賀県で行われた。九州電力玄海原子力発電所が立地する玄海町で震度6強の地震が発生したと想定。何らかの理由で、定格熱出力運転中だった玄海4号機で冷却剤が漏えいし、冷却機能を喪失した後、炉心損傷に至る事象を想定して訓練が行われた。政府、自治体、九州電力など367機関が連携して、初動対応から住民避難の意思決定、実際の避難行動まで訓練した。当初計画では、安倍晋三首相が官邸で原子力緊急事態宣言を出す予定だったが、3日の北朝鮮の核実験に対応するため、官邸での訓練は中止になった。
 九州電力は3日、発電所内などで行われた訓練の一部を報道陣に公開した。代替緊急時対策所ではプラントの状況確認とその対応が行われ、テレビ会議システムを利用して本店の原子力施設事態即応センターと情報を共有した。
 代替緊急時対策所で指揮を執った今村博信執行役員・原子力発電本部玄海原子力発電所長に午前10時50分、原子炉を冷却する水を送り込む高圧注入ポンプが故障し、全基が停止したことが報告された。今村所長は原子力災害対策特別措置法10条に基づく通報を行い、関係機関など約70カ所に連絡を行った。本店の瓜生道明社長は発電所対策本部に対し、「あらゆるサポートを行う」と強調。「全社一丸となって対応してほしい」と呼び掛けた。
 発電所では事故拡大防止のため、移動式大容量ポンプ車を準備する様子や、放射性物質で汚染された負傷者を原子力災害拠点病院に搬送する訓練を公開した。
 九州電力は旧唐津発電所用地(唐津市)で後方支援拠点の設営・運営訓練を実施。予防的防護措置準備区域(PAZ)の要支援者移送訓練も実施。九州電力社員が要支援者を福祉車両に乗せて移送した。
 原子力総合防災訓練は、原子力災害の対応体制などの検証を目的に開催されており、参加機関は367機関。約6500人が参加した。九州電力や協力会社から約490人が事故対応に当たった。

(電気新聞2017年9月5日付1面)