九州電力は、火力発電所の出力を抑制しても、さらに下げ調整力が不足した場合に備え、出力制御指令に関わる連絡が確実に実施できることを確認する訓練を15日に開催する。太陽光発電など約2千件の設備が訓練の対象となる。実際に出力制御は行わない。こうした大規模な出力制御訓練が行われるのは国内で初めて。訓練は今回を含め9月中に3回実施する計画。九州電力エリアでは今秋にも本土で初となる出力制御が行われる可能性が高まっており、どの程度の事業者が確実に出力制御に応じるか確かめたい考えだ。
この訓練は、電力広域的運営推進機関(広域機関)が沖縄電力を除く一般送配電事業者9社と実施する「下げ調整力不足対応訓練」の一環として行われる。九州電力は16日に出力制御が必要になった場合を想定し、事業者に対して電話やメールで模擬指令を発令。事業者が受令したことを確認する。
出力制御の対象になるのは、離島を除く九州電力エリア内の太陽光発電事業者のうち、年間30日まで無制限・無補償で出力が抑制される旧ルール事業者。これはパワーコンディショナー(PCS)で時間単位の自動制御ができる指定ルール事業者とは異なり、出力制御指令を受けて事業者が手動で操作を行う必要があるためだ。訓練にはオンライン制御ができない風力の全事業者も参加する。
九州電力の本郷賢和・送配電カンパニー電力輸送本部副部長兼運用計画グループ長は、事業者の中には操作を忘れてしまう事業者がいることなども考慮し、3回の訓練で「これぐらいの事業者が確実に実施するという数字を確認したい」としている。
出力制御は需給のバランスを維持し、安定供給を維持するために行われる。火力発電の抑制や揚水発電所の揚水運転など運用上の工夫を最大限実施しても、供給力が需要を上回ってしまう場合に実施される。
離島を除く九州電力エリアの太陽光導入状況(7月末時点)は、接続可能量817万キロワットに対して741万キロワット。今後も接続量の増加が見込まれている。春や秋は電力需要が減少するため、出力が不安定な太陽光が占める割合が増加。このため、今秋にも九州本土では初めて出力制御が実施される可能性が高くなっている。年間を通じて、特に電力需要が低い大型連休の4月30日は、太陽光の出力が最大73%を占めた。
(電気新聞2017年9月11日付1面)