エネコミ

2017年10月配信

2017年 10月11日
4〜6月の需給実績/太陽光、西日本で4割強占める

◆出力調整回避へ火力抑制、揚水運転/系統運用面で“飽和状態”

 2017年度第1四半期(4〜6月)の全国10エリアの需給実績がこのほど出そろった。1時間当たりの需要電力量に占める太陽光の割合が西日本6エリアで最大43.4%に達した。全国でも最大38.0%を占め、太陽光の出力制御を回避するための火力の抑制や昼間の揚水運転が全国的に行われた。太陽光の導入量は拡大の一途をたどるが、太陽光のように需要に応じて出力を制御できない電源は系統運用面で飽和状態に近づいている。
 電力各社は1時間当たりの需要電力量と主要燃料種別の発電電力量を集計し、四半期ごとに公表している。全国の需要全体に占める太陽光の割合は、4〜6月の累計で7.4%となり、前年同期から1.9ポイント上昇した。
 太陽光の出力がピークを迎える正午前後をみると、この割合は平均2割強になる。最大は4月30日午前11時〜正午の38.0%で、前年同期の最大(5月4日正午〜午後1時)を8.3ポイント上回った。この時の全国の需要電力量は7806万8千キロワット時、太陽光発電量は火力30基分に相当する2965万1千キロワット時だった。特に西日本6エリアは43.4%に達した。

 ◇九州で75.4%
 同時間帯の実績をエリア別にみると、九州の75.4%が突出して高い。太陽光は600万キロワット時に迫り、九州電力は揚水動力で200万キロワット時を消費したほか、自社の石炭火力や中央給電指令所から直接制御できない電源を含めて出力抑制を実施し、太陽光の出力調整を回避した。同エリアでは正午前後の太陽光の割合が平均4割を上回り、計19日間は6割を超えた。逆に3.6%しか賄えなかった日もあり、需給運用は難しさを増している。
 九州に次いで太陽光の割合が高いのは四国で、4月23日正午〜午後1時の64.9%が最大だった。両エリアは原子力の再稼働によってベース供給力が手厚くなった分、出力変動の激しい太陽光の受け皿となる火力の割合が減少したことも重なり、出力制御が現実味を帯びつつある。
 太陽光の出力制御を回避するため、電力広域的運営推進機関(広域機関)と電力各社はもう一つの対策を準備している。広域機関システムを活用した「長周期広域周波数調整」だ。揚水動力と火力の出力抑制だけでは、太陽光の受け入れ余地が不足する場合、広域機関が指示を出し、連系線の空き容量を使って他エリアに電力を送電する。4月に機能確認、9月に訓練が行われ、実施できる体制は整っている。

 ◇かさむ費用
 ただ、太陽光の受け入れ余地を増やすほどコストはかさむ。揚水動力源が夜間の安価なベース電源から、賦課金を徴収される太陽光に変わることによる差は大きい。また、石炭火力やLNG(液化天然ガス)火力は出力を下げると効率が低下し、発電単価が上昇する。広域周波数調整を実施する場合は、電力会社間でインバランス料金を基準とする精算コストも発生する。
 太陽光の系統連系申し込みは現在も続いているが、周波数制御や需給バランス調整に必要な調整力は増える一方だ。さらに、大規模太陽光の開発が系統の弱い地域に集中し、電力需要が伸びないにもかかわらず、増強が必要になるケースも続出するなど、飽和感が強まっている。

(電気新聞2017年10月11日付1面)